ゆうきまさみ『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』22巻 小学館 2000年

 「もはや菊花賞どころではなかった・・・・」

 というわけで,ひびきちゃんご懐妊!です(といっても本人は,「これで,なんか入っているとはねー・・・」とのことですが(笑))。
 19巻で,少年誌にはめずらしい「熱い一夜」を描いたと思ったら,今度は,少年誌史上はじめての(とも噂される)できちゃった結婚であります。いやはや・・・(^^ゞ

 前にも書きましたように,この作品は「日常」を描いています。作者は「あたりまえ」にこだわっています。しかし,ときとして「あたりまえ」のことが,非常に鮮烈な印象を与えるときがあります。というのも,マンガというのはデフォルメされた表現だからです(絵柄だけでなく,ストーリィ展開なども含めて,です)。それは単に「誇張」するだけではなく,逆にものごとを「矮小」する場合,さらに言えば「隠蔽」する場合もあります。
 たとえば10歳代後半の少年少女にとって,恋愛やセックスは重大関心事です。ですからマンガでも,その読者の関心事を取り上げ,素材とします。ただし素材としながらも,そこには「夢」や「幻想(妄想?)」が加味されます。恋愛を主題にしたマンガの場合,異性との恋の成就―両思い,キス,セックスなどなど―が,物語のゴールとしてしばしば設定されます。そこにいたるまでのプロセスをコミカルに描く作品が「ラヴ・コメ」と呼ばれ,この作品も,ついこの間まではその路線を歩んでいたと思います。
 しかしこの作品では,「その後」を描こうとしています。「熱い一夜」=ゴール=ハッピィ・エンドとはしません。それは2021巻における駿平ひびきとのすれ違いやケンカであったり,ひびきの涙であったりします。さらに今回のひびきの妊娠も,オーソドックスなラヴ・コメでは滅多に描かれることのない展開と言えましょう。けれども,日常生活においては,「熱い一夜」の後も恋愛は続きますし,避妊をせずにセックスすれば妊娠する場合もあるわけです。それこそ「あたりまえ」のことなのです。
 ところが,少年誌の場合,その「あたりまえ」のことがしばしば排除されます。セックスは,少年の欲望の具現としてのみ表現される場合が多いように思います。むしろ,「妊娠する側の性」である少女を主人公にした少女マンガの方が,セックスと妊娠との関係により敏感であるように思います。それをコメディという体裁を取りながらも,少年誌でしっかり描いてしまうところがこの作品のユニークなところではないかと思います。それも,どちらかというと「ほのぼの系」を売りにする『サンデー』でやってしまうところがすごいですね。

 まぁ,それはともかく,
「子供ができたですってぇっ!!」
という駿平のおかーさんの絶叫で幕が閉じた本巻。さてさてどうなりますことやら・・・

 ところでこの巻で一番笑ったのは,あぶみさん「ダダダダダダッ」です(笑)。があまりに哀れです。せっかく久しぶりのカヴァを飾ったというに・・・^^;;

00/04/08

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