第48回仏教保育大学講座

記念講演 芹沢 俊介(社会評論家)
講義   森田 眞円(本願寺派司教/教学伝道センター常任研究員)
讃歌指導   花月 真(勤式・仏教音楽研究所研究員/声楽家)


【開催要項】
1.期間 8月1日(日)〜4日(水)  3泊4日
2.会場  
西本願寺宗務総合庁舎 〒600-8501 京都市下京区堀川通花屋町西入ル
TEL:075-371-5767
龍谷大学 大宮学舍   〒600-8268 京都市下京区七条通大宮東入大工町125-1
ホテル 洛兆   〒600-8327 京都市下京区西洞院正面上ル
TEL:075-351-2801
3.受付   8月1日(日)11時30分〜12時20分
西本願寺宗務総合庁舎中棟ロビー(京都市下京区堀川通花屋町西入ル)
4.募集人員   170名
(1)保育経験年数1年以上の方(2003年7月以前に就職の方)
(2)今までに本講座を受講されたことのない方
(3)3泊4日の共同生活にたえられる方



  《研修レポート@》  仏教保育大学講座に参加して

 「スーパー・ハードな研修があるよ!」と副園長先生に言われて見た研修の日程は本当にハ-ドなものでした。3泊4日間、京都で行われる「仏教保育大学講座」。5時半起床で6時からの仏参、班別討議は全部で7回。考えただけでも眩暈がしてきそうでした。とはいえ、「行ってみる?」と言われて断る理由もなく、「京都に行けるんだ!」という期待感もあり、研修に参加させていただくことになりました。
 しかし、行くとは決めたものの内心は複雑で、どちらかといえば期待感より憂鬱の方が大きかったと思います。その一番の要因は、全部で7回、合計13時間にも及ぶ班別討議でした。普段から進んで意見を出すタイプの人間ではない私にとって、班別討議の時間は永遠のように長く、苦痛な時間です。私は出来るだけ研修のことを考えないようにしてそれまでの毎日を過ごしました。ところが、あっという間に研修前日となってしまったのです。あまりに考えなさすぎた為に、旅支度も前日にバタバタ、心の準備もできないまま…という状態でした。「こんな状態で大丈夫なの?」と多少自分に不安を感じながらも、翌朝京都へと旅立つことになりました。
 予定通り京都に着き、西本願寺の立派さに驚きながらも、緊張で建物をじっくりと見ることも出来ないまま受付を済ませました。改めて見た日程は本当にハードで、夜の9時までみっちり、一緒に来た同僚とも当然班は別々。来て早々に「帰りたい」気持ちでいっぱいでした。
 記念撮影やオリエンテーションを終えると、早速班ごとに別れることとなり、見ず知らずの12名が初めて顔を合わせました。移動の途中で簡単な自己紹介が始まり、年齢や出身地、ここまでの交通手段など他愛もない会話で盛り上がりました。それぞれの出身地を聞いてみると、本当に日本全国いろいろな場所から来ていて、「このような研修でもない限り出会うことはまず無いだろうな」と思いました。生まれも育ちも年齢も異なる人達が、この研修に参加し、同じ班となりそれぞれの課題について一緒に討議し合う。いくつもの偶然が積み重なって私たちが出会ったという縁に不思議な感動を覚えました。
 そんな中、いよいよ班別討議が始まり、予想通り重い空気が漂い始めました。しかし、指導員の先生の提案で、自己紹介やプレゼント交換をするうちに、次第に場が和らいでいきました。やっと討議の本題に入り、それぞれの課題について話し合うことになりました。内容は、私たちは大切な命をもらって生きていること、大切な命なのに害虫は殺してしまってもいいのかという矛盾について。団体行動が出来ない子どもを自分の思い通りにならないからと特別な目で見てしまうことがあるが、それは子どもの命を私物化してしまっているのではないかということ。自分の価値観を押しつけた自己中心的な保育をしていないか? またそうならないためにはどうすべきか。講義の中で「受けとめる保育」という言葉があったが、本当に全て受け止めるだけでいいのか? こう育ってほしいという願いも必要なのでは…?など、どれもなかなか簡単には答えがでるものではなく、改めて考えさせられるものばかりでした。
 西本願寺・興正寺・東本願寺での参拝、見学。龍谷大学での講義・見学を交えながら重ねていく判別討議は、苦痛を感じる暇もなく、あっという間に過ぎていきました。その内に、班内の絆のようなものも出来始め、それぞれ親しみもわき、より深い討議が出来るようになっていきました。そして、最後の班別討議では、今までに討議してきた課題を出しあい、まとめ、3泊4日間を「やり遂げた!」という達成感を共有することができました。
 いよいよ最終日となり、締めくくりに全体討議が行われ、各班での討議結果を発表し合いました。他の班も深まりのある討議が出来たようで、それぞれに自信を持って発表出来ていたように感じられました。ただ、どの班でも課題についての明確な答えは見つからなかったようでした。このことについて、指導員の先生方は「たかが数日の研修で答えが出るものではない。だからこそ、この課題を持ち帰り、日々悩み、自己を振り返りながら過ごすことが大切なのだ。その課題を仲間との討議の中で見つけだしただけでも、この研修の意味は十分にあったはずだ」とおっしゃいました。確かに私達は普段の保育の中で、自分の価値観を中心にした保育をしてしまいがちで、それを振り返る機会もないまま日々過ごしてしまうことがあります。それを思い出すためにも、また間違いを繰り返さないためにも、この答えの出ない討議は重要なものとなったと思います。
 今回の仏教保育大学講座に参加させていただき、見ず知らずの人達とでも一つの課題について話し合えることの素晴らしさを感じると共に、矛盾の中でも自己を見つめ直していくことの大切さを改めて感じることが出来ました。また、初めは苦痛だった班別討議も、個々の課題を自分のあり方と照らし合わせて真剣に考えることで、とても充実したものになりました。
 最後の討議を終え、私たちの班は全員が涙を浮かべて別れを惜しむほどでした。『たった3泊4日ではあったが、何度も深く討議を重ねた私たちは「仲間」と言えるのではないか。」という指導員の先生の言葉に、みんな深く頷いていました。
 研修が終わり、みんなそれぞれの地方へ帰っていきましたが、「今回の研修で得たことを忘れないで過ごそう」と約束しました。この研修で苦楽を共にした仲間が、日本のあちこちで頑張っていることを思い出すと、私も頑張らなければという勇気がわいてきます。初めは複雑な気持ちで旅立った私でしたが、研修を終えた今、参加して良かったなぁと心から感じることが出来ています。(水元良美)



  《研修レポートA》  仏教保育大学講座を終えて

「8月1日から4日は、京都で仏教保育大学講座に参加」と副園長先生から言われました。研修の話を聞いた時は、「大変なのかな……」とは思いましたが、一方では初めて京都に行けるという嬉しさもありました。けれどもいざ研修の日が近付いてくると、「この研修は厳しい」「知らない人と3泊4日を一緒に過ごす」などということを耳にして、正直「嫌だ…、行きたくない」という気持ちが強くなっていきました。そんなことを思っているうちに、研修の日がやってきました。
 研修初日。長時間の移動を経てやっと京都に到着しました。これから始まる研修のことで頭がいっぱいだった私は、ここが京都なんだ!という嬉しさはありませんでした。西本願寺に到着し、開講式の後に記念撮影があり早速班別に分かれてホテルに移動しました。「知らない人達との3泊4日は長いな…」と溜め息がでました。ホテルに着いても、班の人とはあまり会話をすることもなく、また話すことと言っても、せいぜい「早く帰りたいね」と言う程度でした。また、日程を見て分かってはいましたが、班での行動が多く、「3泊4日、本当にこの人達と一緒にやっていけるのかな?」という不安を感じましたが、でも「ここまで来た以上、頑張って乗り越えるしかない」と覚悟を決めました。
 班別討議が始まりました。やはり、はじめはお互いに初対面ということで、緊張気味でなかなか言葉が出ず、時間だけが流れていきました。私の班で一番の悩み事として話し合ったのは、「命は大切」と言っているけれども、このことについて自分たちの中でもまだ明確になっていない点がある。だから、このことを明確にしたいということで話し合いました。その過程で、命は大切だと言っているけれど、一方では命を奪っている私たちがいるということが問題になりました。それから発展して「きゅうりの間引き」の話になりました。保育の現場では、子どもの前で蚊やハエなどを殺してしまうことがあります。子どもたちには「命を大切に」と言っているのに…。(もしそれが人間だったら…とも考えました。)そこで、命を大切にしなくてはいけないと言っているのに、その一方では殺してしまっているという矛盾にぶつかりました。私達は殺生をしてはいけないと伝えているのに、事実としては自分達が生きるために殺しています。それを当たり前だとか、仕方がないことだとして、いつの間にかそれを正当化してしまうような自己中心的な考えに陥ってしまっているということに気付かされました。
 長い時間話し合った結果は、始めはこの問題の答えを求めていたけれど、今の段階ではこの問題に早急に答えを出そうと焦るのではなく、長い人生の中で、まだ20年そこそこしか生きていない私達が命の大切さを子ども達に「教える」のではなく、子ども達と共に「命の大切さを学んで行く」ということが大切なのではないか、ということになりました。また担当の先生から次のような助言をいただきました。『仏参とは、忘れていたことを思いおこさせてくれます。人生には、答えはないので、問いをまだまだ深めることが大切です。@なぜ? Aこうかな? Bあ〜そうか! でも…、@なぜ? Aこうかな? Bあ〜そうか! 原因を追求して結論を得る。そしてまたそこから原因を追求して行く。このように、繰り返し繰り返し新たな問題を見つけていくことが大切だ…と。
 研修と班別討議を繰り返していくうちに、いつの間にか研修も残りわずかとなり、班の人達とは初日とは大違いでとてもうちとけて親密な会話もできるほど仲良くなりました。最終日の前夜は、レポートを書き終わりみんなで「お疲れさま!」ということでジュースで乾杯をしました。いろいろな県から来ているということで、自分の住んでいる県の話や、園の話などでとても盛り上がりました。
 そしていよいよ研修最終日となりました。この日のプログラムは、全体討議と班別討議でした。全体討議では、感極まって涙を流しながら話す人もいました。また最後の班別討議の反省の中では、誰もが「この班のみんなに出会えたことが嬉しく、別れが寂しいです」ということを口にし、みんなの思いが一つになっていました。私も初日は「早く帰りたい」という気持ちでいっぱいだったのに、最終日には共に過ごした班の仲間との別れが寂しいという気持ちになっていました。
 この仏教保育大学講座に参加したからこそ出会えた仲間。そんな仲間ができたことがこの夏、私の一番の思い出となって残りました。当初「嫌だ…、行きたくない」と思って臨んだ私でしたが、、今では本当に参加出来て良かったと思っています。(山口千穂)



仏教保育大学講座は、浄土真宗本願寺派(西本願寺)・真宗大谷派(東本願寺)・真宗興正派・真宗仏光寺派が共催しています。

第48回となる平成16年度の講座は西本願寺の担当で、西本願寺宗務総合庁舎・龍谷大学大宮学舎・ホテル洛兆を会場に8月

1日から4日までの3泊4日間行われます。平成16年度は全国から151名の方のご参加がありました。                .
 

【開講式】 西本願寺・総御堂 【記念写真】 西本願寺・総御堂
【基調講義】 丁野恵鏡先生による「講座開設の願い」の講義 基調講義の行われた「ホテル洛兆・鶴亀の間」
【講義】 本願寺派司教・教学伝道センター常任研究員の森田眞円先生による「ひかりといのちきわみなし」と題する講義 期間中、連日プログラムに組まれた班別討議
班別討議 班別討議
班別討議 夜のつどい



   
第48回仏教保育大学講座日程


 8月1日(日)
11:30   受付
(西本願寺 宗務総合庁舎中棟ロビー)
12:30   開講式
記念撮影
13:30   移動(洛兆)
14:00   オリエンテーション
14:30   基調講義
15:30   班別オリエンテーション
班別座談会
18:00   夕食
19:00   班別討議1
20:30   勤行
21:00   班長会議
入浴・就寝


 8月2日(月)
    起床・洗面・移動
7:00   晨朝参拝(西本願寺)
7:30   朝食(聞法会館)
8:30   移動(龍谷大学)
9:00   講義1
10:30   班別討議2
12:00   昼食
13:00   讃歌指導
14:00   班別討議3
17:00   移動(洛兆)
17:30   勤行
18:00   夕食
19:00   夜のつどい
21:00   班長会議
入浴・就寝


 8月3日(火)
6:00   起床・洗面・清掃
7:30   朝食
移動(興正寺)
8:00   晨朝参拝(興正寺)
移動(龍谷大学)
9:00   講義2
10:30   班別討議4
12:00   昼食
13:00   記念講演
14:30   班別討議5
17:00   移動(洛兆)
17:30   勤行
18:00   班長会議
夕食
19:00   班別討議6
班の課題
レポート
21:00   入浴・就寝


 8月4日(水)
6:00   起床・洗面・清掃
移動(東本願寺)
7:30   晨朝参拝(東本願寺)
8:00   移動(洛兆)
朝食
9:00   全体討議
11:00   班別討議7
12:00   閉講式
解散