高橋葉介『手つなぎ鬼』ぶんか社 2000年

 やぁっと手に入ったぁ・・・という感じの1冊です。本書が出ていたことは,もうずいぶん前にメールをくださった方から教えていただいていたのですが,版元がぶんか社なので,てっきり『マンイーター』(高橋葉介)とか『放課後キッチン』(水田恐竜)みたいな大判かと思い込んでいて,そんな棚でばかり探していました。ところが実際には,「ホラー ミステリー シリーズ」というコミック版サイズの1冊だったんですね。なかなか見つからないはずだ・・・やれやれ(^^ゞ

 さて本書には,各編16ページほどのショート・ストーリィ11編が収録されています。ヴォリューム的に『学校怪談』を思い起こさせる作品集ですが,「学校」という「縛り」がない分だけ,ヴァラエティに富んだ内容になっています。

 わたしが気に入った作品はというと,まずは表題作「手つなぎ鬼」。危険な横断歩道を渡る不安を「架空の親」を想定することで,乗り越えようとする少年少女が,じつに生き生きとしています。「手つなぎ鬼」に連れて行かれた少女を助けに行こうとする少年の姿に凛々しく爽やかなものを感じながらも,「もし少女を連れて帰ってきたら」と想像すると,ちょっと怖くなってしまうところもいいですね。
 おつぎは「天使」。この作者お得意の「無言劇」です。不気味な男に囚われた少女を助けた青年は,しかし・・・というお話。「天使」と「悪魔」の造形を逆転させた。ひねた(笑)発想が楽しめます。ラストの哀しげな主人公の表情も余韻がありますね。また作者の「あとがき」を読んで,「なるほど,そういう話だったのか」と納得しました^^;;
 そして一番のお気に入りは「父の顔」。すれ違いの生活で,最近,ぜんぜん父親の顔を見ていない少女。ある朝,父の忘れ物を届けに追いかけた彼女が見た「父の顔」とは・・・というストーリィです。最初は単なる「奇想」ばかりの作品かとも思いましたが,ラストでツイスト。「奇想」によって表現されながらも,最後の少女の意味深長なモノローグは,日常生活の底に沈殿している不気味さを上手に醸し出していますね。なお気に入った理由が,わたしの好きな髪をまとめた立石双葉嬢似のキャラクタが出ているから,というわけではなくもないです(笑)
 本巻最後の「アウトサイダーの夜」も良かったです。自分を「怪物」と思い込む鬱屈した青年は,女子高生を刺し殺そうとし・・・というエピソードです。サイコっぽい前半,アイロニカルに展開する中盤,そしてホッとする着地。巻末の初出情報を見ると,本書の配列は必ずしも発表順というわけではないようで,この作品をラストに持ってくることで,最後を「ピシリ」と締めた感じがします。

 そのほか印象に残った作品としては,3話の掌編よりなる「星空の物語」(とくにマンガ的表現を逆手にとった「II 星座」),最後の主人公のセリフに苦笑させられる「ビンの手紙」,夜の街を徘徊するモンスタたちがどこかとぼけた感じで楽しい「鞄の少年」といったところでしょうか。

01/01/16

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