高橋葉介『学校怪談』6巻 秋田書店 1997年

 本屋で手にとって表紙を見ると,いつもの山岸くんとともに見知らぬ女性キャラ。「誰かな」と思いつつ,中身を読むと「九段九鬼子」なる新キャラクタ。山岸くんの学校の新任教師で,なんと魔女
 これまで山岸くんが主人公とはいえ,個々の短編の「山岸くん」は,いわばパラレルワールドの「山岸くん」で,だからたとえある話で死んでも,次の話ではやはり主人公。ところが,このたび登場の九段先生は,なにやら不思議な力を持っていて,山岸くんをはじめ,主要登場人物を,不可思議な危機的状況から救い出すという役回りのようで,個々の短編が,一種の読み切り連載のような形式に移行したようです。

 おまけに九段先生が明るいキャラクター(ときどき怖くなる)なせいか,全体的にコメディ色が強くなりました。そのため山岸くんにはホモ疑惑は出るわ(93話「憑依」),ラブコメは出るわ(99話「二人芝居」ほか),教師と生徒の禁断の恋は出るわ(104話「深夜急行」)で,これまでの『学校怪談』の雰囲気がずいぶん変わりました。山岸くん以外にほとんど名前のなかった常連キャラにも名前がつきましたし・・・。そんな常連キャラのひとり,図書委員の眼鏡少女は,「立石双葉」という名前だったようです。作者もお気に入りのようですが,わたしも前々から気に入っていたので,ちょっとうれしかったりします。両親が離婚するかもしれない家庭で,いろいろと情緒不安定のようです。

 さてこの巻でのお気に入りは,98話「父帰る」です。九段先生がお酒を買いに出かけると,酔いつぶれた中年男がひとり。先生に家まで送ってもらった男が言うには,「事故で娘が死んだ。なぜ俺が死ななかったのか・・・」。ところが彼の持っている娘の写真というのは,九段先生の教え子で,いまも生きている・・・。みずからの死を自覚していない死者,という設定は,この作者の作品にはときどき見られますが,結末の暖かさがなんともいえません。
 それと,102話「黄昏の王国」。立石さんが図書館から借りた本を読んでいると,背後に少女の霊が・・・。事情を知った彼女は,残りの下巻も探すけれど,作者は休筆宣言をしており・・・。立石さんの優しさがあふれるほのぼのとした作品です。ちなみに休筆宣言をしている作家というのが「井筒順慶」(笑)。作者もかなりのファンのようですね。あと,反則技に近いところもありますが,101話「通り魔」も凝っていて好きです。

 内容に関係なく一番笑ったのは,97話「宇宙からのメッセージ」のなかの山岸くんのセリフ「僕も霊媒体質なんですか?」。今さらなにを言ってるんじゃい,おのれは!(笑)。

97/06/02

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