高階良子『はるかなるレムリアより』講談社 1975年

 8年前,「竜宮城に行く」といって姿を消した,幼なじみのノン。周囲は彼が死んだものとあきらめる中,ルイは「かわりもの」と蔑まれながらも,ノンの帰りを待っていた。そんな彼女の前に現れた不思議な男たち。彼らはいったい何者なのか? そしてルイに迫る謎の魔手。ルイはノンにふたたび会えるのか? そしてノンのいう“竜宮城”とは・・・・。

 『超少女明日香』と一緒に,織里さんから送っていただいた1冊です。ううっ・・・(以下同文)。織里さん,重ね重ね,多謝!

 一読,「フリルじゃあ! パンタロンじゃあ! ヒラヒラじゃあ! 70年代じゃあ!」と思わず錯乱してしまいました(笑)。いやぁ,なんとも古典的少女マンガの絵柄ですなぁ。
 主人公のルイの前に,サンダーバードスカラベと名のる青年が姿を現し,そのうちサンダーバードの方は外国人という設定らしいのですが,その服装といったら・・・・,思わず「うぷぷぷっ」と吹き出してしまいそうな,ほとんどロック・シンガーのステージ衣装・・・。「かっこいい外国人といえばロック・シンガー」という,1970年代の少女たちの夢の反映なのでしょうね。
 さすがに読んでいて,照れます(笑)。

 で,内容はというと,これがまた,思わず「レムリア大陸じゃあ! 輪廻転生じゃあ! 地球空洞説じゃあ! 大陸書房じゃあ! デニケンじゃあ!」と,やっぱり錯乱してしまいました。
 この作品,『なかよし』に掲載されていたんですよね。『なかよし』というと『おはよう スパンク』とか,『キャンディ! キャンディ!』とか,どちらかというと,ローティーンの少女向け雑誌というイメージ(あるいは偏見ともいう)が強いのですが,いやいや,なかなかきっちり“伝奇”していて,あなどれません。
 ルイの父親が考古学者という設定なのですが,ときおり顔を出して,ナーガラージャやら,スカラベやら,ガアリイやら,アムリタデヴィやら,おそらく世界各地の神話や伝説が元ネタの小難しい名前を解説してくれます。
 また,暗黒神ガアリイが生け贄の少女を殺して,食べてしまうシーンやら,ルイが“人類の女王”アムリタデヴィの転生として自覚する際の試練のシーン(四方八方から投げられたナイフが,彼女の身体に突き刺さるシーン)とか,けっこう残酷な描き方です。
 さらに“死の霧”が人々を襲う場面でも,我先に逃げようとして,殺し合う人々の姿を描き,
「これでは死の霧が地上をつつむ前に人間たちはみずから滅びてしまう・・・」
などと登場人物に言わせています(かなり抑えているとはいえ,『デビルマン』を思い出させます。そういえば,サンダーバードが変身した姿って,シレーヌに似てるなぁ・・・)。
 やっぱり「ほんとに『なかよし』?」と思ってしまいます。もしかして『なかよし』は,途中で編集方針でも変えたのでしょうか?

 エンディングもなんだか凄いです。ルイとノンが再会し,ハッピーエンド,というところは,まあ,少女マンガの“お約束”ではあります。しかし,まさか,こういうエンディングとは・・・。たしかに,ガアリイの野望は打ち砕かれ,地球上にまた平和が訪れた,ということなのでしょうが,ある意味では,けっこうペシミスティックなエンディングですよね。う〜む,凄いとしか言葉が出ない・・・。

98/02/12

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