竹本泉『アップルパラダイス』全3巻 ホビージャパン 1994〜97年

 聖林檎楽園学園…そのあまりに広大な学園には,ヘンなところが山ほどあり,ヘンなことも毎日のように起こる。生徒たちは,そんなヘンなことに右往左往しながらも,楽しい学園生活を送っているのであります…

 この作者お得意のかわいい女の子たちと,これまたお得意の「ヘンな話」のカップリングがじつに楽しい,今のところ,「マイ・ベスト・竹本泉作品」です(ちなみに「次点」は,『てきぱきワーキン・ラブ』『よみきり☆もの』)。前々から感想文(というか紹介文というか)を書きたかったのですが,ながいこと2・3巻しか入手できず,このたびようやく1巻をゲット,全3巻揃って感想文を書くことができるようになりました。

 まずメイン・キャラクタは3人の女の子。メッシュと太め眉毛(笑)がかわいい江崎まりあん(<一番のお気に入り),クールなメガネのお姉様風西園寺京子(<色っぽいところが捨てがたい(^^ゞ),いつも最後に「変だぜ」の一言で締める朝ヶ丘絵理子(<一見まともそうで,じつは一番「ヘン」)。さらに,なぜかイタリアからの留学生(?)エミリオ(<京子に惚れてる),一癖二癖ありそうな,最後まで名前が出てこない先輩(<もしかすると頭がいい)などが加わります。
 それぞれのキャラが,周囲で起こりまくる「ヘンなこと」に対して,いろいろな反応をしつつも,どこかのほほんとした雰囲気が醸し出されています。まりあんの反応はわりとストレートなのですが,京子の,しれっとした対応が笑えます(とくに1巻「みいらののろい」や2巻「みずのそこ」,トラブルの原因が自分なのに,ぜんぜん懲りていないところとか(笑))。

 さて本シリーズの魅力のもうひとつは,「ヘンな話」なのですが,これを書き出すと,もうきりがない!(笑) とにかく,「よく,こんなヘンな話,思いつくなぁ」と感心してしまうくらい,毎回,笑わせてくれます。ですので,いくつかお気に入りのエピソードを…
「たまごたまご」(1巻)
 まりあんが拾った奇妙なタマゴ。どんどん大きくなって,出てきたのは…………小さなタマゴというオチが,ナンセンスでいいです。
「みいらののろい」(1巻)
 「聖林檎楽園学園 その裏手には……古王国時代のファラオの墓がいくつかある……」というナレーションに,思わず「いったい,どんなとこやねん!」とツッコミながらも爆笑。
「ころもがえ」(1巻)
 こういった,言葉の元来の意味をすり替えたネタって,この作者,けっこう多いんですよね。それにしても,5年に1回,制服が変わる高校って…
「すいせいくる」(1巻)
 この作者の「SF魂?」が発揮されたエピソード。彗星衝突による地球の破滅というヘヴィなテーマ(実際,冒頭の描写はそんな感じ)に,思いっきり脱力なオチをつけています(笑)
「ながれつくもの」(2巻)
 学校裏の海岸に30年に1回流れ着く幽霊船,その船長の一言「ちょっと呪われちゃってね」がいいです。
「ねこじだい」(2巻)
 こういったスタイルのお話って好きです。周囲でいろいろ「ヘンなこと」−宇宙人の侵略やら異界からのモンスタなどなど−が起きているのに,みんな猫が「解決」しちゃって,主人公たちは何も知らないってお話。
「ねむいごご」(2巻)
 聖林檎楽園学園には17の時計塔があるという設定からしてヘンな上に,そのひとつに「眠れる森の美女」のアイテム「呪われた糸のつむぎ車」があるという発想がまた…
「やまあるき」(2巻)
 『ルプ☆さらだ』でも同じようなネタが使われていましたが,こちらはもっとストレート。山の「足」が猫足なのがかわいい(笑)
「こうしゃのつながり」(3巻)
 校舎が,異次元を通じて?南半球につながっているという着想は,やはりこの作者「SF者」です。最後に描かれたエミリオの「解決策」はミステリ的にもグッドです。
「ひとりよぶん」(3巻)
 一番まともそうな絵理子の意外な正体が明らかにされるエピソード。「理」に基づいたオチ(出席番号の重なり)を描いた上で,もうひとひねりさせるお話作りがじつに巧いです。
「こえ」(3巻)
 声と猫が「分かれてしまう」という着想は,いったいどこから来るのだろう?
「うみのそこ」(3巻)
 海の底に難破船が通るハイウェイ????? このエピソードの発想もぶっとんでます。 またそんなことでは動じない「先輩」が,けっこうツボ(笑)
「まるいわ」(3巻)
 をを! これはミステリですよ,本格ミステリ! 宇宙人による「ミステリ・サークル」としか思えない不可思議現象が,最後でしっかり「理」に落ちています。いや,「犯人」の正体はとんでもないものなんですが,聖林檎楽園学園だから,これで十分「理」なんです(笑)

 なお江崎まりあんや朝ヶ丘絵理子は『よみきり☆もの』にも登場します。また『ブックスパラダイス』恵里子というのは,絵理子の別ヴァージョン(「別ヴァージョン」ってなんだ?)ではないかと思います(というより,『ブックスパラダイス』の舞台そのものが,もしかして聖林檎楽園学園ではないか?とも)。要するに,この作者も,この作品の設定とキャラ,好きなんでしょうね(「なんでもアリ」ですから(笑))。

05/05/29

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