竹本泉『よみきり☆もの』1巻 エンターブレイン 2001年

 本当のタイトルは「よみきり」と「もの」の間には「ハートマーク」が入るのですが,無いので,星マークを入れてみました(笑)

 作者自身の言葉によれば,「ふつうの話」だそうです。しかし,連載作品に,このようなタイトルをつけていること自体,あまり「ふつう」とは言えません(笑) ただ,ここでいう「ふつう」というのは,SF的設定ではない,ファンタジィ的設定ではない,という意味での「ふつう」であって(なかには多少ファンタジィ・テイストのものもありますが),出てくるキャラクタは,どこか「へん」です。けれどもそれは「エキセントリック」とか「奇妙」といってしまうほどのものではありません。むしろ,その「へん」さが,魅力でもあり,ユニークさになっています。

 オープニングの「おんなじかんじW」には,真夏美夏という双子の少女が登場します。活発なのが真夏,おっとりしているのが美夏,ということになっていますが,じつは・・・というお話。「外見は同じでも性格は違う」という双子の典型的ヴァージョンを逆手に取った作品です。そんな少女(たち?)に惚れてしまった少年の困惑がコミカルに描き出されています。
 「まんほ〜るのあう」は,「足許不如意」(笑)の少女が主人公。いますよね,「やたら他人の足を踏むタイプ」と「やたら他人に足を踏まれるタイプ」って。「むぎゅ」でも「あう」でもないはずのマンホールが,いつの間にか,「むぎゅ」になり「あう」になってしまう・・・そんなファンタジィ(というほど大げさなものでもありませんが)へと「するり」と移行してしまうところが,奇妙な味わいを醸し出しています(先生の「マンホールのあうの人だろ?」と言うときの「あたりまえ」という顔つきが秀逸)。
 学校の屋上,それも時計塔のてっぺん,避雷針のところまで登る趣味(?)を持った少女が登場する「あっちの屋根 こっちの屋根」は,本集中,わたしが一番好きな作品です。学校の屋上には,どこか「夜の学校」と似た,「入っちゃ行けない場所」という魅力がありますが,そこだからこそ見える「光景」というのも,同様な魅力があります。いいよなぁ,手を振り替えしてくれる人がいたら・・・「はまって」しまう丘田くんの気持ち,よくわかります。
 「わらいの園」は,「天は二物を与えず」という教訓深い(笑)お話。美人で頭も良くてスポーツも抜群,でも笑い方が「へん」という少女が,じつにユニークで楽しい設定ですね。でもって,その「笑い声」に動じない田村くんの「理由」,思わず吹き出してしまいました。作者の照れたようなコメント−「いやまあ」−もいいですね。
 「メガネを取ったら美人」という,少女マンガの「黄金パターン」をネタにしたのが「ゆれる百万ボルト」。う〜む,こういうこと−目が悪い少女の「目つき」にクラクラしてしまう少年−って,実際にあるからなぁ・・・(<何か,思い当たる節があるらしい^^::)。それにしても「メガネで三つ編みがそのスジのハートを直撃?」というのは,大笑いしてしまいました。
 本巻ラストの「みちのまんなかに岩」は,登校途中,朝にだけ通り道に出現する岩という,「をっと,ファンタジィか!」と思わせるイントロですが,じつは「理」に落ちます(まぁ,ホントに「理」と呼んでいいのかどうかは・・・((((((((((((^^;;)。この作品,元気な女の子に振り回される男の子というシチュエーションが多いですが,本編の上岡くん「もしかしておまえの調子よすぎの人生に誰かがブレーキをかけようとしてるんだといいのに」というしみじみとしたセリフ,とくに泣かせますね(笑)

 ところで,このまえ『ルプ☆さらだ』の感想文をアップしたら,掲示板でけっこう反響が・・・けっしてメジャアな作家さんとは言えませんが,もしかすると「隠れファン」が多い作家さんなのかも?

01/11/14

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