第43回まことの保育講座


2004(平成16)年度 保育連盟研修テーマ
「ご縁・・・『まこと』に照らされ、育ち合う世界を求めて」



アプローチのポイント
1. 育ち合う人間関係(子ども・保護者・保育者)
2. いのちを育む世界(自然・社会)
3. いのちの豊かな響き合いを支える園運営のあり方

【開催要項】
1.趣旨 日々であっている保育のさまざまな課題に学び、まことの保育の理解を深め、
保育者としての 資質を高める。
2.期日  

2004(平成16)年8月18日(水)〜20日(金)

3.受付    8月18日(水)9:30〜10:30  本願寺聞法会館
4.会場   研修会場・宿舎:本願寺聞法会館
〒600-8357 京都市下京区堀川通花屋町上柿本町  TEL:075(342)1122
5.参加資格   保育園・幼稚園等で3年以上勤務の保育士・教諭及び職員
6.募集人数   60名


  《研修レポート@》 まことの保育講座を受講して

 園で「まことの保育講座」についてのお話を頂いた時は、まだ実感がわかず深くは考えていませんでした。その後、申込書に問題点や悩みを書いた頃から、少しずつ「研修に行くんだなぁ」ということを考えるようになりました。また、研修に行く日が近付くにつれて、正直な気持ち、グループ別での行動や宿泊も知らない人達と一緒ということで、不安で不安で仕方がありませんでした。実際、研修会場に着くとすぐにグループ別での行動が始まり、不安が早速現実のものとなったことで、今にして思えばおそらく笑顔さえもひきつっていたような気がします。
 グループ別の討議は、まず自己紹介から始まりました。自分の番が来るまでの間、人前で話すことが大の苦手な私は、自分の心臓の鼓動が聞こえるほどの不安と緊張感に包まれていました。また、受講者は全国から集まって来ているということもあり、自分の鹿児島弁のアクセントが気になってより一層思うように話すことが出来ずに恥ずかしい思いをしました。
 グループ討議では、どこの保育園・幼稚園でも同じような悩みや課題を抱えているようで、具体的には保育者同士の人間関係のあり方、落ち着きがない子どもへの対応の仕方、園での仏参の仕方、保護者への対応方法などについて、それぞれに意見を出し合って話し合いを進めました。
 「幼児のおつとめ」は形でするのか? 心でするのか?と問われて、心でするということは分かってはいても、毎日のお参りでは形に拘ってしまっているような気がしました。また、何故、仏さまを拝まなければならないのか? という問いに出会った時、それは自分とは何か? 保育とは何か? ということを明らかにするのと同じくらい大切なことだと気付きました。
 話し合いを通して、生かされているいのちの喜びを表現することが合同礼拝の意義であり、ただ行儀良く座ることを強要することではない。あるいは特に幼児の場合、おつとめは確かにメリハリをつけることも大切ではあるが、決して苦痛を感じさせるようなものであってはならず、楽しい雰囲気の中で行うことが大切である。さらに、日頃は何気なく歌っている仏教讃歌ですが、その讃歌指導の中で、子どもたちが心で音楽を聞けるような環境を作ることが大切で、そのためにはまず教える側が自らの感性を育てることを忘れてはならない。歌というのは、歌い方ひとつでやわらかく聞こえたり、うるさく聞こえたりすることがあるので、歌の表情をしっかりと伝えられるような歌い方を心掛けるようにする、といったことを学びました。
 仏教讃歌は、み教えがストレートに書いてあり分かりやすいので、子どもたちにも仏教讃歌を通してみ教えをわかりやすく伝えられることを知ったので、これからは保育の中で仏教讃歌をもっとたくさん取り入れていきたいと思いました。
 研修の中で一番大きく取り上げられた問題は、「いのちの尊さ」についてのことでした。今の子どもたちは、「死」から隔離されています。そのために、「殺す」ということや「死ぬ」ということが、ゲーム等の仮想現実の中のこととして理解されているようです。そのために、「殺す」とか「死ぬ」というような言葉が、日常子どもたちの口から簡単に出てきたりします。以前、ある園で飼っているウサギが連日殺されるという事件が起こりました。このような時には、どのような対応すればよいのか…? あるがままの事実を見せてその哀しみを子どもたちと共有するか、あるいは子どもたちにその無惨な姿を見せずに伏せてしまうか、実際に直面したときには迷うと思います。また、同じいのちでも、ウサギと害虫と言われるハエや蚊の場合、その対応は決して同じではありません。いのちの「重さ」という点では同じはずなのに、これもまた簡単に来片付けられない問題です。
日頃から、絵本などを通していのちの問題にふれるように努め、死の事実から遠ざけるのではなく、子どもたちと共にいのちについて考え学ぶことが大切だと思いました。
 「死」の事実を子どもの目の前から隠すということは、「死からの問いかけ」を放棄していることになる、食事の時にもいのちを頂いて生かされていることを伝える、食物連鎖によっていのちがいのちを受け継いで輝く、他の生きもののいのちを頂かなければ生きていけない私たちは、まさに「生かされて生きている」ということを伝える…、「いのちの問題」は、どこまで話し合ってもなかなか結論が出ない、難しい永遠のテーマなのかなぁと思いました。指導員の先生が、難しく考えるのではなく、またお参りだけに止まるのでもなく、毎日の生活の中で「手を合わせる子どもを育てる」ことを実践していくことが大切だと教えて下さいました。私自身、いのちを頂いていることに感謝して、自然と手を合わせられるよう心がけていけたらと思います。
 まことの保育講座を終えて、ホッとしたというのが正直なところです。始めはグループ別での行動に不安を感じていたのですが、縁があって同じ部屋になった人達とも保育について夜遅くまで語り合うことが出来て、とても充実した三日間でした。心からこの出会いに感謝したことでした。その一方で、全国から集まった保育者の中で、自分の意見をうまく伝えることが出来なかったり、自分の保育に対する姿勢の甘さを思い知らされてショックを受けたりと、情けなさや恥ずかしさでいっぱいになった三日間でもありました。
 この研修に参加させていただき、自分の課題がたくさん見えてきました。口先だけの保育ではなく、どんな視点でどのような生き方をしているか。子どもたちと接して行く中で、いつも相手を思いやることの出来る子ども、優しく温かい言葉をかけられる子どもを育てるためには、何よりもまず私自身が子どもたちにそのように接していくことが大切だと思いました。まずは、身近な「出されたものを残さずに頂くこと」「感謝して手を合わせることから始めたいと思います。そして、この研修で学んだことを少しでも保育に生かせるよう努力していきたいです。
(宮薗雅代)



  《研修レポートA》 まことの保育講座を受講して

 私は「まことの保育講座」のお話を聞いた時、正直言ってとても不安でした。班ごとの行動、宿泊も他の園の先生達と一緒、そして自分がとても苦手な班別討議など、今まで参加した研修会とは全く違う日程で、当日まで「どうしよう…」とずっと考えていました。普段は口数も多い私ですが、改まった場での発言となると、すごく緊張して途端に話下手になってしまうからです。
 聞法会館に着いてからすぐに班に分かれて一日目のプログラムが始まりました。同じ班の先生達とは、昼食を食べる頃から少しずつ話が出来るようになり、次第に気持ちも落ち着いていきました。開講式、基調講演が終わってから一回目の班別
討議の時間になりました。まずそれぞれに園の自己紹介を行い、自分達の抱えている問題等を出し合った後、話し合いに入りました。私は質問された時に発言しただけでしたが、他の先生達は保育をする中での自分の思いをたくさん話されました。三時間班の長い討議も終わり、夜の就寝勤行をして一日目の日程が終わる頃には班の先生達とすっかり仲良くなりました。
 二日目は、晨朝参拝から始まりました。一時間の正座は思っていたよりもすごくきつくて、身が引き締まる思いでした。中川真昭先生の講演を聞いて、日々の保育の中での様々な矛盾について、改めて考えさせられました。「いのちは大切」と口では簡単に言っていますが、「生きとし生けるもののいのちが全て大事」ということや、自分一人で生きているのではなく、他の多くのいのちに支えられ、そのお陰で生かされて生きていることを深く感じました。この講演を受ける形で、その後の班別討議では、「いのちの尊さ」について話し合いました。私は、これまで当たり前のように行っていたムカデなどの害虫駆除について考えさせられました。虫のいのちを考える前に、子どもたちが刺されてしまうのではないかと思い、それらの虫を目にするとつい駆除してしまいます。でもそれは、人間の立場からの行為で、「虫も人間もいのちの重さは同じ」と口にしていながら行動面では違うことをしているという矛盾したあり方です。そのことを子どもたにどのように伝えて行けば良いのか、とても難しいです。また讃歌指導では、自分の知らない曲ばかりだったでとても新鮮な気持ちで楽しく歌うことが出来ました。二日目は班でまとめやレポートを提出して何とか無事に終わりました。
 三日目、気がつけば「あっ」という間に最終日を迎えました。一日目からすると、気持ちの持ち方が少しずつ変わってきたような気がします。全体会では、各班で問題にしたことを出し合って、その問題について話し合いました。どの班でもいのちについての問題が多く、いろいろな視点からの意見が出されました。多くの意見を聞きながら、大人の解釈で物事を見るのではな、あるがままの事実を子どもたちに伝えていけたらいいなと思いました。
 この「まことの保育講座を」受講して、今の気持ちはただ一つ、「本当に良い経験が出来て良かった」ということです。朝は5時起床、夜は9時までびっしりと詰まった日程で大変でしたが、その中で得たことを何か一つでも今までの自分にプラス出来るように努力したいと思います。
 とても良い経験をさせてもらった一方で、研修の中で自分自身に対して腹立たしいような悔しくて情けない思いをしました。それは、苦手な班別討議で、自分から進んで発言することが出来なかったことです。11名の中で、保育の経験年数では上から4番目だったのに、私より経験年数の少ない人もみんな自分の考えをしっかりと持っていて積極的に発言していました。
自分は9年目なのに「年数を重ねただけで、ただ漠然と過ごしてきたのではないか…」ということを研修期間中、ずっと頭の片隅で思っていました。自分の班の先生達は、みんなとても良い人達で、チームワークもよく、初めて会った人たちとは思えないほど親しみが持てました。またリーダーの先生が「みんな話そうよ!」と言って下さったので、私も「次の班別討議では一つでも進んで発言しよう!」という気持ちはありましたが、いざ討議が始まると実行することが出来ませんでした。
 最後に、講座を受講した感想を述べる時に、そのような自分のあまりのふがいなさに思わず悔し涙が出ましたが、もし次にまたこのような機会があったら、一つでも多く発言出来るような自分になっていたいです。そのためにも日々の保育の中で、いろんなことに問題意識を持って取り組んでいきたいと思います。
(盛田美和)



まことの保育講座の様子

(写真提供:西本願寺組織教化部)

【開講式】 参加の先生方で献灯・献華を行いました。 開講式の宮地最勝理事長の挨拶(総御堂)
【基調講演】 本願寺派布教使・若林眞人師(大阪教区・中島東組・光照寺住職)より、『「ナモアミダブツ」って何ですか?』の講題で、仏教や浄土真宗の教えについてわかりやすくお話をいただきました。 合計64名の参加者が熱心に受講されました。
【就寝勤行】 仏参のあと、法話に引き続き、各班代表の方が感話を行いました。 【記念講演】 作家としてもご活躍の中川真昭師(奈良教区・葛城南組・浄念寺住職)より、「いのちの音、きこえますか」と題して、子どもたちを取り巻く様々な事例を通して「いのちの大切さについて」お話をいただきました。
【班別討議】 1〜6班に分かれて、計6回保育の悩みや課題について討議を行いました。 話し合いを通して、日頃の自分の保育を見つめ直したり、これからの保育についての意欲を新たにしたり…と、得るものは“大”でした。
【全体会】 各班より課題を持ち寄り、全体で討議を行いました。 【閉講式】 修了証が授与され、2泊3日の講座が無事に終わりました。


 各園では、「人材育成」の観点から、年間を通して様々な研修会に職員の方のご参加を図られていることと存じます。        .

本願寺派保育連盟では、毎年8月18日から20日までの2泊3日間、京都の聞法会館を会場に「まことの保育講座」を開催しています。

講座のご案内については、毎月送られてくる「保育資料」で予めなされていますが、その内容についてはなかなか知る機会がありませ
 
んでした。そこで鹿児島教区からの参加者のレポートと、組織教化部のご協力を得ました画像でその様子を紹介することにしました。


第43回まことの保育講座日程


【日程】
 8月18日(水)
9:30 受付(聞法会館 1階ロビー)  
10:30   オリエンテーション(聞法会館3階研修室
11:00   昼食(聞法会館地下食堂)
12:00   開講式(総御堂)
記念撮影(総御堂向拝)
13:00   基調講演
講師:若林眞人 先生<大阪・中島東・光照寺/布教使>
講題:
(3階研修室) 
15:00   班別討議I(3階研修室
《休憩を間に挟む》
18:30   夕食(聞法会館地下食堂)
19:30   礼拝行事について
講師:丁野恵鏡 先生<保育連盟理事/滋賀教区小谷保育園園長>
(会場)
20:30   就寝勤行
21:00   入浴・就寝
 8月19日(木)
5:30   起床・洗面等
移動
6:00   晨朝参拝(総御堂)
帰敬式
7:30   朝食(聞法会館地下食堂)
9:00   記念講演
講師:中川真昭 先生<奈良・葛城南・浄念寺/作家>
講題:
(聞法研修室     )
10:30   班別討議II(聞法研修室     )
12:00   昼食(聞法会館地下食堂)
13:00   讃歌指導
講師:上月麻由 先生<本願寺派教学伝道研究センター職員>
(聞法研修室  )
14:00   班別討議III又は分散討議(聞法研修室    )
17:30   休憩
18:00   夕食(聞法会館地下食堂)
19:00   夕事勤行・法話(聞法研修室     )
20:00   班別討議IV(まとめ・レポート)
(聞法研修室     )
21:00   入浴・就寝
 8月20日(木)
5:30   起床・洗面等
移動
6:00   晨朝参拝(総御堂)
書院拝観
7:30   朝食(聞法会館地下食堂)
休憩
9:00   全体会(聞法研修室     )  
11:00   まとめ(聞法研修室      )
12:00   閉講式  (聞法研修室     )
解散