竹本泉『よみきり☆もの』7〜9巻 エンターブレイン 2004〜2005年

 というわけで(?),2〜5巻に続く「まとめて感想文」の第2回目です(笑)

 まず「7巻」は,「雪ふれば」「地の底からの小生」「発熱の方角」「天までとど…」「しとしとのつゆ」「目がさめたら朝」の6編を収録。
 一番好きなのが,「地の底からの小生」。「見た目とキャラのギャップ」というのは,この作者のお得意パターンのひとつですが,このエピソードは,小柄でカワイイ女の子が,かのFMの伝説的番組「ジェットストリーム」城達也ばりの渋い声(<知らんぞ,今の若い人)という設定。なにより笑ってしまうのが,先崎くんが,背後から声を聞いたときの空想イメージ…タバコをくわえたショートカットのお姉さんというのが,いいですね。それと主人公志馬村久詩「世の中,失敬な人間に満ちあふれているようだー」の一言もグッド。
 それから「目がさめたら朝」。寝起きがムチャクチャ悪いため,とてもラブコメ(なのか?)の主人公とは思えないほど,狂暴な目つきをした主人公がいいですね。

 続いて「8巻」は,「楽でない人生」「たつはしら」「神秘の秘密」「夢みる記憶」の4編に,シリーズ外の(にもかかわらず,テイストはまったく同じで,シリーズ内といってもけっしておかしくない)2編「コゲたトンネル事件」「空飛ぶ郵便娘」を収録しています。
 やはり注目は,「聖林檎楽園学園」が舞台の「たつはしら」。久しぶりに朝ヶ丘絵理子嬢が登場します。彼女の「そういえばたしかに昔っからあるなー」のセリフに,「何 何十年も前から知ってるようなこと言ってるのよ」のツッコミに,「あ,そうか! 絵理子は学園の座敷童だったのだ! そうだよな,もともと「ひとりよぶん」というエピソードだったものな」と納得した次第。オチも,いかにもこの学園らしいです(笑)
 寝ている間に見た夢を一度もおぼえていないという少女を主人公にした「夢みる記憶」(なんかタイトルがSFっぽいですね)では,なんといっても寝言の録音。「ヘチマ ヘチマには気をつけて 3枚におろすの ごきげんよろしゅう ヘタ」に爆笑。

 「9巻」は,「そこにあるゆきだるま」「なみだのむこうに」「ブックスパラダイスVol.4」「衝突コースの少女」「眠る一等地」「霧は深いし」の6編。
 目つきが悪いために人生損している男の子河川敷くんの話「なみだのむこうに」が楽しめましたね。じつは河川敷くん,「いい人」だとわかったときの,クラスメイトのセリフ「元がこわいから,ちょっとでもいいことすると,すごく意外で元より100倍もいい人に思われるのねー」は,けっこう一般社会でもありそうで含蓄があります(笑)
 この作者の「わけのわからなさ」が炸裂しているのが,「霧はふかいし」。朝,深い霧のなかでクラスメイトが巨大化するという,「もうなにがなにやら」といった味わいのお話なんですが,「あとがき」で作者が「これはふつうの話」と断言しちゃってるところがすごい(笑)

06/05/14

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