むんこ『らいか・デイズ』1巻 芳文社 2005年

 花丸小学校6年2組の春菜来華(はるな らいか)は,児童会会長兼学級委員長。頭脳明晰,ウォームハート,リーダーシップも発揮して,同級生はもちろん,先生,PTAからも頼られるスーパー小学生。でも恋の話とお料理は苦手…そしてお母さんの前では,いつも子どもに戻ります…

 『ラディカル・ホスピタル』目当てで立ち読みしている(たまに買う)『まんがタイムオリジナル』で目にして,気がつくと,毎回楽しみにするようになった作品です(『まんがホーム』にも連載中)。

 さて主人公の春菜来華は,上にも書きましたように「スーパー小学生」です。しかしだからといって,奇矯なキャラクタというわけではなく,無口でおとなしめ,それでいて頼られるという,管理職のおじさんが見習ってほしいほどの人格者です(笑) そこらへん,この作者の,比較的シンプルな描線によるすっきりした絵柄とよくマッチしていて,へんな「イヤミ」がありません。
 また,彼女の「スーパーぶり」も,「ありそうな」ところと,「ありえない」ところの,ちょうど境界あたりを「いったりきたり」している感じで,ことさらにお話を大きくしていかないところが好感を持てます(まぁ,夏休みの宿題に「日本経済の先行きについて」などという論文を提出する小学生はいないと思いますが)。来華のスーパーぶりの引き立て役として登場する担任の女性教師は,『あずまんが大王』ゆかり先生の「ノリ」がちょっと入っていて,楽しめます(「あれ」ほどひどくありませんが(笑))。

 しかしヒーロー,ヒロインに,つねに「弱点」があるのは,世の習い。そのあたりはベタな設定でありますが,来華の場合は,恋のお話とお料理です(「恋話(こいばな)」と言うそうです。おじさんは知らなかった(笑))。とくに恋愛感情に対する純情さが,この作品の大きな「柱」になっており,それが彼女の「スーパーぶり」とのギャップを産みだし,ほのぼのとした雰囲気を醸し出しています。
 たとえばクラスメイトの竹田くんとの,「恋」と呼ぶにはためらわれるような「淡い関係」は,この作品の読者の年齢層からすると,とても懐かしい風景に見えるのではないでしょうか(毎日,朝のラジオ体操で顔を合わせながらも,暑中見舞いをやりとりするエピソードが,じつによいです)。つまり彼女はまた,読者誰もが経験したであろう「普通の小学6年生」でもあるのです。
 そう,じつは彼女の「普通ぶり」もまた,この作品の大きな魅力となっています。とくに母親との関係を描いたエピソードに,それがよく現れています。ちょっとレトロな「日本のおかーさん」といった感じで,包容力のありそうな母親に接するときの彼女は,あくまでも「子ども」ですし,母親もまた,来華の「スーパーぶり」などを気にすることなく,彼女を「子ども」として扱います(来華が,ほつれたスカートを母親に縫ってもらい,そんな母親を彼女がうれしそうに見ているエピソードが好きです)。

 つまり,よい意味での「普通の母娘関係」や,来華の恋愛に対する小学生らしい純情さを,いわば「担保」として,「世界」を「現実」の地平にとどめていることで,来華の「スーパーぶり」が産み出すフィクション的なおもしろさとともに,「懐かしさ」や「ほほえましさ」を誘い出す作品となっているのではないかと思います。

 ちなみにこの作者,2005年3月現在,『まんがくらぶ』に,奇妙な父子家庭をユーモラスに描いた「まい・ほーむ」という作品を,また『まんがタウン』に,来華と180度正反対のファンキーなキャラを主人公にした「はいぱ〜少女ウッキー!」を連載しています。4コママンガ界の「期待の新星」といったところでしょうか。

05/03/12

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