あずまきよひこ『あずまんが大王』1巻 メディアワークス 2000年

 最近,ネット上でよくこの作品の名前を見かけるのですが(当ページの掲示板でも何度か言及されましたね),読むのははじめてです。掲載誌は『コミック電撃大王』とのこと・・・コミック雑誌はほとんど読まないので,どういうタイプの雑誌なのか,かいもく見当もつきませんが,タイトルだけ見ると,なんだかゲーム雑誌のようにも思えてしまいます。
 で,この作品,4コママンガなのですが,評判通り,おもしろかったです。爆笑という感じではなく,読んでいて思わず頬が弛む,あるいは「プッ」と吹き出してしまう,そんな感じのおもしろさです。じゃあ「どこがおもしろいか?」というのを文章で書こうとすると,これがまた難しい・・・

 メイン・キャラクタは5人の女子高生。彼女たちは,それぞれにユニークな個性を持っていますが,かといって,現実から飛び抜けたようなキャラではありません。むしろ「ありそうな」感じといった方がいいでしょう。たとえば榊さん。美人で頭が良く長身,運動神経も抜群,周囲の女の子から「ちょっと怖そうだけどそのへんの男子よりいいよね」と囁かれるタイプです。そんな「見た目」とは違って,じつは彼女は小さな猫や犬が大好き少女です。そのあたりの見かけと内実とのギャップが,どこかほのぼのとした笑いを誘います(野良猫に手を咬まれてしまう彼女の姿が,なんかせつなくも可笑しいです)。また滝野智。もうはた迷惑なくらいに,声がでかくて,ひたすら元気です(いわゆる「無駄に元気」といったタイプですね(笑))。クラスには,ひとりやふたり必ずいるといった感じです。
 転校生の春日歩(ニックネーム“大阪”(笑))は,ぼんやりタイプ。割り箸がきれいに割れたのに喜んで,みんなに見せびらかす姿が笑えます。水原暦は,常識人の委員長タイプ。でも智へのツッコミはなかなか辛辣です。10歳で高校に入った天才少女美浜ちよだけが,やや異色ですが,日本でもアメリカ同様,スキップ制を導入するそうですから,こういった女子高生もリアリティが出てくるのでしょうね。「ゆかり車」に乗ったあとのトラウマが心配です(笑)(あ,榊さんにひそかに想いを寄せているかおりんもいたけど,カヴァに出てないし・・・^^;;)

 このように女子高生の方は,わりと普通なのですが,登場する先生の方が,むしろ非常識というか,子ども染みてます(笑) とくに主人公(なのか?)のゆかり先生。最初のエピソードで思いっきりボケまくるところは,この先生のキャラを端的に表現していて,巧いですね。また親友が結婚するというので抜き打ちテストをやったり(「うるさい,だまれ」の一言が秀逸),かつての同級生で同僚の体育教師黒沢先生の水泳部の練習に強引に参加したり(しかもビキニ!(笑)),休み時間にプレステを買いに行って授業に遅刻したり,と,もうやりたい放題。
 さらに,「女子高生とか,好きだから」という理由で,高校の先生になったという木村先生が登場するに及んで,高校生の「普通さ」を補うかのような(笑)暴走ぶりを見せてくれます(時節柄,この手の教師,実際にいそうで怖い(^^ゞ)。

 つまり「いそうな女子高生たち」が織りなす日常ギャグと,「あまりいそうにない(あるいはいたらちょっと怖い)先生たち」の非常識ギャグという,ふたつのテイストが入り交じった作品と言えましょう。作者は,それらのギャグを絶妙な「間」で描き出しています。そう,この作品のおもしろさは,ネタとともに,その「間」にあるやに思います。4コマという限られたコマ数にも関わらず,大胆に「空白」的なコマを挿入することで,妙にとぼけた雰囲気を出すことに成功しています。それが,この作者の持ち味なのでしょう(個人的には,目の中のゴミを追いかける大阪とか,ゆかり先生が,板書しながら「あっついなぁー! もう!!」と雄叫びをあげる話の「間」が好きです)。

 さあて,第2巻以降を買いに行こうっと!(なお,4コママンガなので,2巻以後の感想文はご容赦ください(_○_))

01/10/06

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