たがみよしひさ『NIGHT ADULTCHILDREN』2巻 学研 1998年

 5人の泥棒たちの活躍を描いた本シリーズの第2巻です。でもって早くも最終巻です(T_T)。う〜む,結局,計13話,1年ちょっとの連載だったようです。しかしこれは人気がないので打ち切られたというわけではなく,掲載誌の『コミック ノーラ』が今年の9月号で休刊してしまったことによるものです(この作品自体の連載は8月号までですが)。けっこう頑張っていた雑誌だけに,ちと残念ですね。

 さて本巻には,Target7からTarget13までの7編6エピソードが収録されてますが(前後編がひとつあります),いずれも本業である“泥棒”そのものよりも,それに関わる別の事件を描いたエピソードが目立つように思います。
 たとえば「Target7 STALKER」は,何者かによって風(プー)こと田中風太郎が刺され,さらに喫茶店「night」(そのマスタはじつは故買屋)のウェイトレス遠藤由里が誘拐されるというエピソードですし,また「Target8 寂しい踊り子」では,ゴケグモこと黒沼東吾が盗みに入った邸宅で,殺人事件に巻き込まれるというお話。1巻にもありましたが,風たちが探偵的な役回りをするミステリ仕立てのエピソードです。
 でもって,この「Target8」からは,ほんまもんの探偵が登場します。そう,あの『NERVOUS BREAKDOWN』安堂一意であります。かつて安堂が解決した事件の犯人が,ゴケグモの従兄弟ということです。おまけにこちらのキャラ・石川仁右衛門警部は,三輪青午の叔父さんという念の入れよう(笑)。
 このシリーズで安堂的な立場にあるのが風ですが,両者ががっぷり組んで火花を散らすのが,「Target11・12 強盗殺人容疑逃走者約二名 前・後編」です。風たちが“仕事”をしたすぐそばで,強盗殺人事件が発生。聖華&アンデスコンビが,その容疑者として警察に追われることに! “仕事”をアリバイにするわけにいかないので,逃走するふたり。風と安堂との間で虚々実々の駆け引きが繰り広げられ・・・,というエピソードです。で,田沼探偵事務所のコンピュータを坂田がハッキングしたり(京子の方もハッカーですが・・・),アンデスはじつはマッド・クッキーこと朽田の知り合いの元傭兵だったり,と,こうなると,もうほとんど『NERVOUS BREAKDOWN』の番外編のような様相さえ呈してきます(笑)。このエピソードの段階では『コミック ノーラ』の休刊も本決まりになっていたでしょうから,作者の方も,おもいっきり悪のりしている気配がありますね。でもエピソードとしては動きがあってなかなかおもしろく,また風vs安堂という組み合わせも,けっこうお話づくりとしておいしいんじゃないか,と思わせます。その点でも,この作品の終了は残念ですね(作者は「あとがきですのだ」で,「終わってよかった」とか言ってますが(笑))。

 どこかの雑誌で,またこの作者のミステリ・コミック,掲載してくれませんかね? 週刊誌はきついから月刊誌ということになるでしょうが(潮出版あたりとか・・・。以前にもこの作者描いているし・・・)。

98/08/21

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