わかつきめぐみ『言の葉遊学(ことのはあそびがく)』白泉社 1999年

 昨年の10月くらいから年末にかけて,出張が続くなど,妙に忙しく,ストレスがたまりました(じつは,これから年度末にかけてますますストレスがたまりそうなんですが・・・^^;;)。で,「忙」という字が「心が亡くなる」と書くように,「荒む」とは言わないまでも,どうもギスギスした気分になるものです。そんなとき,この作者のシンプルな描線と透明感のあるタッチ,そしてほんわかしたテイストは,気分をリラックスさせてくれます。いわゆる「癒し系」?

「言の葉遊学(ことのはあそびがく)」
 猫のセンセーと,作者を思わせる弟子のふたりが,各回のテーマに合わせた古語を紹介するという,一種のエッセイ・コミックとでもいった感じの作品です。作者の「あとがき」によれば,『So What?』のサヴ・タイトルをつける際に参考にした『広辞苑』をネタ本にして描いたそうです。以前にも書きましたが,この作者の言語センスは,漢字を多用した,一種独特のものがあります。それは,キャラクタ名にへんに小難しい漢字を使いたがる流行とは一線を画していて,漢語と古語特有のしっとりとした情緒があります。ところで,この猫のセンセー,和服のお尻に穴が開いていて,尻尾が出てるところがかわいいです(笑)。
「そんなわしらのeveryday」
 “オレ”が交際を申し込んだ夏目頼子は,ちょっと変わっていて・・・
 まあ,要するに「なんとかは犬も喰わない」といった類のラヴ・コメなのですが,ヘンに誇張した大げさな表現を採用しないところが,この作者の持ち味なのでしょう。「・・・トイレだ」の一言は笑みを誘いますね。
「One Fine Day」
 文化祭の前日,有田くんと鈴木さんは,妙に意気投合して・・・
 こーゆー作品を読んで,「恋愛直前の光景」と思ってしまうのは,少女マンガの読みすぎでしょうか?(笑) 鈴木さんのコンプレックスや,有田くんの失恋話を,ウェットになることなく,さりげなく描けるところはいいですね。
「Frozen Flowers」
 卒業式の日,藤井くんと山口さんは,とある計画を実行し・・・
 同性に恋した男女が入れ替わって,それぞれの憧れの人から,第2ボタンとリボンをもらうという発想はたのしいですね。でもって,ラストで明かされる男の恋心のせつなさが,タイトルと響き合って,じつに秀逸です。本作品集では一番好きなエピソードです。
「花の音」
 夏休みの終わりの日,天体観測に学校に来た白井さん。でも他の部員は誰も来ず・・・
 高校生活のある日をスケッチしたような作品です。「皆既日食」の写真をエンゲイジ・リングかわりにプレゼントするというのは,ロマンチックですね。
「花降りやまず」
 卒業式に遅刻した4人は,彼らだけの卒業式を開き・・・
 この作品に出てくるセンセーは,前作の天文部のセンセーと同じ方のようです。なんだか,これといって内容のないような作品ですが,「こんな卒業式もちょっといいかも」と思わせ,ほほえましくなります。
「佳人,降臨す」
 死んだじいちゃんが残した“天女の羽衣”。とても信じられなかったけれど,天女が目の前に現れ・・・
 「知らないなら知ってもらうだけのことです。ふられるのはそれからでも遅くありません」・・・うう,こんなええ女の子,どっかにいないかなぁ・・・(°°)
「雨の宮 風の宮」「雨の宮 風の宮―春の虹―」
 雨師の都世くん風師のゆりかちゃんとの,ファンタジック・ラヴ・コメディです。プレイ・ボーイで,ロリコン・・・都世くんって,サイテーですね(笑) ところで,「雨師」と「風師」の間に子どもができたら,「嵐師」になるのでしょうか?^^;;

00/01/03

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