秋月りす『かしましハウス』4巻 竹書房 1998年

 4人姉妹を主人公にした4コママンガです。
 以前にも少し書きましたが(→こちら),4コママンガの感想文は,とても難しいです。ですが,この作品は,今回初登場ですので,紹介を兼ねて書きたいと思います。ですから,5巻が出ても,感想文はご容赦ください。

 冒頭にも書きましたように,主人公は,ひとみ・ふたば・みづえ・よもぎの四姉妹です。作者によれば『若草物語』がモデルだそうです。そのほか,お父さんと飼い犬のゴローが出てきます。お母さんはすでに亡くなっているようです。
 長女のひとみは,(あまり売れていない)ジュニア小説家。年甲斐もなく(笑),フリルのいっぱいついた洋服やファンシィ・グッズが大好きなのですが,その実,感覚はしっかり“主婦”してます。
 次女のふたばはOL。休暇になると,野に山に海に川にと飛び出し,帰ってくるとコンピュータの使い方を忘れてしまうほどのアウト・ドア派,体育会系です。
 三女みづえは大学生。少々(?)ボゥッとした性格なのですが,割のいいアルバイトを探し出す特技と,抽選に強いという強運の持ち主です。
 四女よもぎは,算数の苦手な,一見どこにでもいる小学生のようですが,じつは四人姉妹の中で一番の“大人”です。
 家の中でいまいち影の薄いお父さんは,俳句が趣味のサラリーマンのようです。メス犬なのに「ゴロー」と名づけたのは,お父さんのたっての希望だったそうです。きっと寂しかったんでしょうね(笑)。

 『OL進化論』の紹介でも書きましたが,この作者は,おそらくかなり鋭く細 かい観察眼と,それをユーモアに転換できる柔軟な発想を持った人なのではないかと思います。その持ち味は,この作品でもいかんなく発揮されています。が,それ以上に「巧いな」と思うのは,この作品の設定そのものです。
 4コママンガは,主人公のキャラクタ設定により,たとえば「主婦もの」とか「OLもの」「会社もの」あるいは「学生もの」とかに分類できるのではないかと思います。多くの4コママンガ家は,複数の連載を持ち,それぞれで異なる「○○もの」を書いているように思います。
 ところが,この作品では,ひとつのシリーズで,さまざまなタイプの「○○もの」をやってしまっているのではないでしょうか? つまり,ひとみは作家ですが,どちらかというとこの家の主婦のような役割も果たしているので,「作家もの」「主婦もの」のキャラクタとして使われますし,ふたばは「OLもの」,みづえは「大学生もの」と「なにやらよくわからない変なネタもの」,みづえは「小学生もの」という風にです。4人全部あわせたネタなら,これもしばしば見受けられる「大家族もの」と呼べるかもしれません。ですから内容もヴァラエティに富んでいて,飽きません。一粒で二度も三度もおいしいマンガといえるのではないでしょうか?

 はっきりいって,掲載誌の『まんがライフオリジナル』は,この作品のためにのみ,買っているようなところがあります。

98/05/04

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