和田慎二『左の眼の悪霊』白泉社 1975年

 やはり,井沢元彦が言うように,日本は「言霊の国」らしい・・・・・(くわしくはこちら)。

「左の眼の悪霊」
 鑑別所で知り合った友人・樹ノ宮ケイは,謎の豪邸「つぐみ館」の相続人らしい。彼女につきそった“私”名張潤子は,そこでこの世のものとは思えぬ奇怪な事件に巻き込まれる…
 最初に読んだとき,神恭一郎ものなので,「オレンジは血のにおい」のようなサスペンスを期待して読んだせいか,途中からの,オカルチックというか,伝奇的な展開にいささか戸惑ってしまった記憶があります。ですから,実をいうと,第一印象はそれほど良くなかった作品なのです(^^;;。
 ただそれからしばらくして,「そういうつもり」で読み返してみると,けっこう自分の趣味に近い内容であることに気づきました(笑)。400年前,歴史の闇に葬り去られた異人を城主とする城,「マザー・グース」を唄うケシの花,迷宮入りした大正時代の「六銭銅貨事件」,一晩で起こった人格変換,そして「つぐみ館」の地下に眠る死者の帝国・・・。
 う〜む,もろ趣味ですねぇ v(^o^)v。
 とくに,「つぐみ館」から地下帝国へと降りる手のひらの形をした階段! 不気味ですねぇ,怖いですねぇ,だからいいんですねぇ(笑)。わたしは,多少,高所恐怖症の気味もあるので,こういったシーンには,ほんと,わくわくしてしまいます。おまけに先端恐怖症であるんで,こういった「眼球ネタ」は,もう背筋に冷たい氷水を流されたように,ぞくぞくしますねぇ。
 なんだか,まるでマ○みたいですが(嗚呼! また「妖しい」と言われてしまふ(T_T)),こういったホラーものは,やっぱり(たとえ個人的な性質によろうとも)怖くないと,楽しめませんから・・・。
 それにしても,“岩田慎二”! 16歳の名張潤子にプロポーズするとは・・・。やっぱりこの作者は,ロリコンなのでしょうか?(この作者の“アリス”好きは有名ですからねぇ(笑))。
 それから,そうそう,暗闇警視は神恭一郎の叔父さんだったんですね。

「校舎は燃えているか!?」
 1年ぶりに母校に戻ってきた麻宮サキ。その母校では,1ヶ月前,旧校舎が何者かによって爆破され,いままた,新校舎爆破の噂が流れていた……母親の減刑と引き替えに“刑事”として捜査をはじめたサキがたどり着いた真相とは…
 さて,この作者の代表作『スケバン刑事』のプロト・タイプとなった作品です。
 で,のっけから記憶間違いかもしれないですが,いまわたしの手元にあるのは1980年刊行の第17版なのですが,この作品の表紙には,右下に小さく「スケバン刑事」と書かれています。それが,どうも「あとからとってつけたような」感じでして,1975年初版にはなかったんじゃないか,というような気がしてならないんです。そこらへんご存じの方がおられたら,ご一報ください(それにしても,マニアックな疑問だ(^^;;)。
 この作品,ミステリとしてもなかなか楽しめる作品だと思います。トリックがうまくいくかどうかは,ちょっと心もとありませんが,伏線もきちんと引かれているし,サキの捜査も,どこかハードボイルドミステリを彷彿させます。

 本書にはこのほか,「パパ・シリーズ」のひとつ「パパにくびったけ」と,この作者の処女作に近い作品「リョーシャとミオ」が収録されています。

98/02/16

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