文月今日子『ゴッド・マザーの息子』1巻 講談社 1995年

 小さいながらも由緒ある老舗の民芸家具メーカー「柳原家具」に,ファンキィな花嫁が嫁いできた! 昔気質の頑固者に囲まれながらも,新妻・あゆみは,夫・侑夫の愛に包まれて,今日もマイ・ペース・・・

 かつて好んで読んでいた「少女マンガ家」さんたちが,その後の歳月の流れの中で,ときに姿を消し,ときに大きく変わってしまうことは,それはそれで仕方のないことではありますが,ちょっとさみしさを感じるのは事実であります。たとえば陸○A○は,結婚して離婚して,いまでは某4コマ・マンガ雑誌に,インターネット・マンガ(?)を描いてますし,まだ読んだことはありませんが,○淵○美○も育児マンガを描いていると聞きますし,○刀○秀○にいたっては,インドに行ったきり,帰ってこないとか・・・
 この作家さんも,いまでは下関で「悪い嫁さん」(本人談)をされているとのこと・・・ 大好きな作家さんだけに,「はたしてどのように変わっているだろうか?」と,不安と期待を抱きつつ,最近の作品を(おそらくはじめて)読んでみました。
 で,読後の第一印象は・・・といえば,「変わってないなぁ」というものでした(笑)。
 というのもこの作者,さまざまなタイプの作品を描いているとはいえ,『わらって! 姫子』『銀杏物語』といった,「基本的にいい人たちのほのぼのホーム・コメディ」を得意とする作家さんであり,上に挙げたような「コテコテの少女マンガ」とは,少々テイストが違っていたように思います。そんなテイストは,本作品のような,夫婦や嫁姑をメインとしたレディス・コミックにシフトしてもすんなりと馴染む性質のものなのでしょう。ですから,「変わってないなぁ」という印象をおぼえたのではないかと思います。

 さて本書の主人公あゆみさんは,アルバイト先で,老舗「柳原家具」の跡取り息子侑夫さんに一目惚れされ嫁いできたのですが,そこには頑固な大奥様がいて・・・と,いかにも「嫁姑戦争」的な設定ではありますが,あゆみさんはいたってマイペース,大奥様も「鬼姑」に徹しきれない「根がいい人」です。ですから彼女の「嫁いびり」も,はたからは「ごっこ」にしか見えません(笑)。また,若奥様のライバルには,「夫の過去の女」というのが出てくるのが定番ですが,その役回りの百合花さん(名前もまた・・・^^;;),見かけはデーハーで,あゆみにライバル心を燃やすものの,陰険なことはいっさいせず,あっさりと身を引いてしまいます。そのほか,「史上最強の女店員」岩田真紀子さんや,あゆみさんの「昔の彼氏(?)」達雄くんやらも出てきますが,やっぱり話を陰惨にさせるようなタイプではありません(とくに達雄くんの「バカゼリフ」がいいです^^;;)。
 そして,なんといっても,この作者のお得意はやんちゃな子どもたちでしょう。あゆみさんの3人の甥「陸・海・広」に振り回される大人たちを描いた第3作は,この作者の本領発揮といったエピソードです。また巻末におさめられた独立短編「オオカミなんかこわくない」も,奥手の男女を結びつけるために奮闘(?)する,したたかでわんぱくな子どもが登場します。こんなキャラクタの子どもたちの活躍こそ,今も昔も,この作者が保ち続ける変わらぬ魅力の源泉なのでしょう。

 ところで,最初のエピソードのラスト,あゆみさんに赤ちゃんが生まれたことになってますが,2作目で妊娠,3作目でもまだ生まれていません。おそらく,最初のエピソードを単独で発表したのち,人気が出たのでシリーズ化されたんでしょうね。

98/07/20

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