青池保子『エロイカより愛をこめて』2巻 秋田文庫 1997年

 文庫版とコミック版とをチャンポンで読んでいますので,わかりにくいかもしれませんが,こちらは文庫版の方です。
 それにしても復活編の22巻とか読んだ後に,文庫版の古いところを読むと,タッチがずいぶん変わっているのがわかります。とくに1巻からの続きの「NO.4 ギリシャの恋」や,その次のエピソード「NO.5 劇的な春」あたりには,まだ少女マンガ的な雰囲気が残っていて,ちょっと違和感があったりします(まぁ,少女マンガではあるんですが・・・)。これが「NO.6 インシャー・アッラー」になると登場人物たちの顔立ちが急速に安定してくる感じです。Z君も3コマほどですが,初登場しますし。
 ところで,登場人物といえば「劇的」に出てくる,ジェイムズ君伯爵のブリーフ(「男性用下着といえ」(笑))を買いに行ったデパートの店員さん。この絵は樹村みのりではないでしょうか? う〜む,なつかしい。『菜の花畑シリーズ』とか『カッコーの娘たち』とか好きだったんですよね。今どうされているんでしょうか?

 と,話がずれてしまいましたが,この巻で1番おもしろかったのが,まだ2巻では未完ですが「NO.7 ハレルヤ・エクスプレス[PartT]」です。平和主義に目覚めた(?)軍事衛星の開発技師が,その軍事機密を持ってローマ法王のもとに駆け込みます。ヴァチカン法王庁の大金庫におさめられてしまったその機密を盗み出すため,NATOは「民間人」の手を借りることになります。その「民間人」というのが伯爵。で,当然その相手をするのが,伯爵を「個人的によく知っているはず」少佐であります。
 ふたりはTEEに乗って,アムステルダムからパリへ,そしてローマへと向かいます。が,少佐の行動を嗅ぎつけたKGBは,ひとりのエージェントを送り込みます。その名は「仔熊のミーシャ」。おお,ついに御大の登場であります。初登場の頃のミーシャって,顔がけっこうふくよかな丸顔だったんですね。それがシリーズを追うごとに頬がこけてくる・・・・。やっぱり少佐やら伯爵やらを相手にしていると,どうしても心労が重なるのでしょう(笑)。たしか任務に失敗して一時期シベリアにも送られてしまうはずですから。たしかこのエピソード,ラストで伯爵が「とんでもないもの」を盗み出すんでしたよね。うう,楽しみ!!

 それにしても,今読み返すと,この作品というのは,その時代その時代の「はやりもん」をずいぶんと入れ込んでありますねぇ。「劇的な春」というのは,たしか口紅かなにかのCMのキャッチコピーだったのではないでしょうか(「劇的な,劇的な春です!」とかいうの)。それから「ハレルヤ」に出てくる「天中殺」ってのもけっこう巷ではやりましたね。結局,あれってなんだったんでしょうか? 占い? 今見るとなんだか格闘マンガの必殺技の名前みたいで笑えます。

 この巻で一番笑ったのが,ロシア産の無表情な殺し屋の団体さん。顔がもろ「ゴルゴ13」「ゴルゴ十三@亀有」ではない)。そんなのが13人そろって少佐を狙撃しようとするんだかか,ソ連らしく,質より量という感じですね。狙撃を伯爵に阻止されて,「同志だめです」って涙を流すあたり,かわいいですね。そういえばデューク東郷の涙目って見たことありませんねぇ(なんだか今回の感想文は『エロイカ』よりも,別のマンガに脱線ばかりしているような・・・(^^;;;;;)

97/12/05

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