朝 礼 訓 辞

平成24年9月3日

  東日本大震災と福島第一原発事故から1年半が経とうとしています。現地では、今もなお、多くの人々が避難生活を余儀なくされ、農作物や海産物の生産や出荷に制限が加えられ、厳しい生活を強いられています。

 報道が少なくなるにつれ、それらの人々の事を私達はつい忘れがちになりますが、いつも心のどこかに自分たちに与えられた生活を感謝し、東北の人々に対する一日も早い復興と復旧を願う思いを忘れてはならないと思います。

 ソ連のチェルノブイリで支援活動を行った元長崎大学の放射線教授の山下俊一先生は、放射線に対する不安や恐怖がもたらす精神的影響の大きさに衝撃を受けたと述べておられます。

 多くの人々が、心因性睡眠障害、アルコール依存症、うつ病、その他種々の身体不調に苦しみ、自殺や一家離散という悲惨な結末がもたらされました。

 チェルノブイリでは、当初異常が見られなかった人が、4~5年後から白血病や甲状腺ガンが発症しています。汚染された牛乳を飲んだ子供達の中から多くの甲状腺ガンが発病していますが、体内に入った放射線要素はおよそ数10%が甲状腺に集まり、それ以外は尿中に排出されるそうですが、チェルノブイリは広大な森林の中にあり、子供達が昆布や若布などを摂取する食習慣がなく、余計に急速に甲状腺に取り込まれたのです。
 日本人は、昆布や若布を沢山摂取していますので、福島の子供達はチェルノブイリの子供達に比べると比較にならない程、軽微であると言われます。

 白血病を起こす放射線としては、セシウムが有力ですが、骨に蓄積され、骨髄を破壊します。これも被爆後4~5年から20数年かかってしまうし、長崎では被爆後67年後の現在も研究は続けられています。
多量の放射線に被曝する事は明らかに危険ですが、低レベルのものではそう心配はないようです。
 動物実験によれば、低レベルの放射線を当てることにより遺伝子を修復する能力が生じたという報告もあります。

 今回の福島事故で警戒区域の人々が浴びた放射線は多い人でも年間20ミリシーベルト以下と言われます。
 しかしながら世界には、インド・イラン・中国・ブラジルのように年間5~50ミリシーベルトも浴びている地域がありますし、飛行機のパイロット、客室乗務員、宇宙飛行士など、日々、高い放射線を浴びる職業もあります。
 しかし、これらの人々に特にガンが多いというデータは今のところありません。

 要は、むやみやたらに心配することなく、ただし、警戒を怠らず、経過を観察し、すばやい対応を行うと言うことだと思います。

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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