朝 礼 訓 辞

平成24年4月2日

  桜の開花が始まり、日本列島の縦断にさしかかりました。
新しい年度に変わりましたが、「せいざん病院」もいよいよ6年目に入ります。
今年度が正念場で、今日からボーリングが始まります。井戸も2本掘る予定です。来年3月には完成を目指しています。
 きっとよい病院ができると私は確信していますが、皆様のご協力が絶対に欠かせないこともよく存じております。皆様のご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

 とっくに正月も過ぎ、餅などの季節ではありませんが、先月、はっと思うような新聞記事を読みました。
 林家彦六という落語家の小話に「餅はどうして、カビるんでしょうね」「馬鹿野郎、さっさと食わねえからだよ」というのがあるそうです。
 昔は、カビないように水餅にしたり、カビのきた餅は包丁で削って焼いて食べていましたが、いまでは一切れずつ袋に入っていて、カビは生えません。昔は、プーッとふくれて弾け、油断すると生き物のように網から転げ落ちたものです。
「どうして餅はやたらとふくらむんですかね」「切り込みがないからだよ」と、林家さんなら言うかも知れません。

 この餅の切り込みを最初に考案したのは、新潟県の越後製菓という業界2位の会社だそうです。餅の側面に切り込みを入れただけで、餅はプーッとふくらみ、こんがりとととても美味しく焼け転げ落ちることはありません。
 これを真似たかどうかは分かりませんが、同じ新潟の業界1位の佐藤食品工業という会社が、餅の上面と下面にも切り込みを入れたらもっとふっくらと焼けるのが判り、販売合戦が始まったのです。
 ところが、最初にアイデアを出した越後製菓が、後発の佐藤工業に対して特許権の裁判を起こしました。
 裁判所は、明らかに特許権侵害であると、後発の佐藤工業に対し、先発の越後製菓に8億円の賠償命令を出しました。先月22日のことです。

 越後平野の餅は、米どころでさぞ美味しかろうと思いますが、餅に一寸包丁を入れただけのアイデアで8億円も儲けるし、一方これを真似ただけで8億円も損するという笑うに笑えないような話ではあります。
たかが餅ですが、されど餅なのです。

 医療とは何の関係もありませんが、こんなことが世の中では時たま起こっているのだなと聞き流していただいて、今月も一緒に頑張りましょう。


                   平成24年3月24日「日経新聞」より
医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

←     →
前へ      次へ