大場惑『虜われの遊戯者(ゲーム・プレイヤー)たち』ハヤカワ文庫 1992年

 この作家さんの名前は,「異形コレクション」『侵略!』で一度拝見したことがあるのですが(感想文はアップしてません(^^ゞ),まとめて読むのははじめてです。

 さて本書は,さまざまなタイプ,シチュエーションでの“ゲーム・プレイヤー”を描いた,6編よりなるSF連作短編集です。ですが,うち4編―「ブレイキング・ゲーム」「スモーキング・ゲーム」「ディギング・ゲーム」「ピーピィング・ゲーム」―と,2編―「リーディング・ゲーム」「メイズィング・ゲーム」―は,テイストがやや異なっています。乱暴な分け方もしれませんが,前者が「ストーリィ指向」であるのに対し,後者は「イメージ指向」とでもいいましょうか。個人的な嗜好としては(別にシャレじゃありませんよ^^;;),前者のタイプの方が楽しめました(もしかして,ここらへんがミステリ者とSF者を分ける境界線なのかもしれません)。

 最初の「ブレイキング・ゲーム」は,鍵屋の“おれ”に依頼された「解錠」をめぐるSFサスペンスです。なんでわざわざSF的設定にしたのだろう,と思っていたのですが,クライマックスで納得しました。ラストの小気味よいツイストも楽しめました。
 「スモーキング・ゲーム」は,タバコが国家的に禁止された社会のお話。喫煙者のわたしとしては,なんとも身につまされる内容ではありますが^^;;,設定はちと陳腐な感じがないでもありません。
 「ディギング・ゲーム」は,「地界」に住む「穴掘り人」「ディック&ディッカー兄弟」が,少女アリスから「桜の木を守ってほしい」という依頼を受けて活躍します。ふたりの「方法」がちょっと理解しづらいところもありましたが,彼らのユーモラスな会話,テンポのよい展開,依頼遂行の奇想天外な顛末,ほのぼのとしたエンディングなどなど,本作品集中では一番楽しめました。シリーズ化してみてもよいのではないでしょうか?
 「リーディング・ゲーム」は“わたし”の手記から構成された作品です。「小説や物語が失われた世界」という設定ですが,成長するとともに「読み手」が主人公の周りから減っていくというところは,実際にもありますね。
 「ピーピィング・ゲーム」は,「覗き屋(覗かせ屋)」“おれ”のもとに,「10年後の自分を見せてほしい」という依頼が来て・・・という内容。作者の「あとがき」によれば「リラックス」して書いたそうですが,ミステリ者としては,もうひとひねりを期待してしまいますね。
 ラストの「メイズィング・ゲーム」は,理由も原因も不明なまま,「迷宮世界」に投げ込まれた主人公が,「求道者」となって,その世界を彷徨するというエピソード。わたしの好きな筒井康隆『旅のラゴス』を思わせるものがあり,けして嫌いなタイプの作品ではないのですが,冒頭にも書きましたように,わたしとしては,「イメージ指向」がやや強すぎる感じで,ストーリィ的にもう少しメリハリがほしいですね。この作品については,長編化を考えているとのこと。たしかに本作品では「迷宮世界」の設定描写にかなりの部分をさいてしまっていますので,むしろ長編向きなのかもしれません。

 ところで,この作者名「大場惑」って,「オーバー・ワーク」のシャレでしょうかね?

99/09/29読了

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