田中芳樹『巴里・妖都変 薬師寺涼子の怪奇事件簿』カッパ・ノベルス 2000年

 冬のパリに出張することになった「ドラよけお涼」こと薬師寺涼子。“私”泉田準一郎も抵抗むなしく同行することになる。お涼行くところに怪奇あり,というわけで,到着早々,空港で人間の脳味噌を吸う奇怪なモンスタに遭遇。背後に日本のハイテク企業がいると断定したお涼は,嬉々として事件の渦中に飛び込んでいく!

 というわけで,「薬師寺涼子の怪奇事件簿」第3弾の舞台は花の都・パリであります(発表の舞台も,なぜか講談社からカッパ・ノベルスに移りました)。しかし,舞台はどこだろうが,薬師寺涼子には関係ありません(笑)。犯罪に国境がないように,彼女にとっても国境はないようです。例によって,傍若無人,唯我独尊,傲岸不遜に,その破壊的パワーであらゆるものを粉砕していきます(ほとんど,ゴジラですね^^;;)。
 で,「今回はパリだから,お涼と泉田準一郎のふたりだけかな?」と思っていたら,神の配剤のごとく(笑),お涼のライヴァル室町由紀子と,「レオコン・キャリア」岸本明もしっかりパリに来ていたりします。日本だったら,由紀子がお涼と顔をつきあわせるのは,同じ警官なので理由はあまり必要としませんが,なぜパリに来てまで,由紀子がお涼と行動をともにするのか? というあたりをしっかり理由づけしているところは,芸が細かいですね。そしてお約束通り,4人は怪事件に巻き込まれる(殴り込みをかける?)ことになるわけです。

 まぁ,今回もご都合主義的にストーリィは展開していくわけですが,前にも書きましたように,そんなことは気にする必要はありません(笑)。お涼の毒舌を楽しみながら,サクサクと読んでいけます。お涼の口にかかると,自分たちが「とんでもない国」に住んでいることも改めて実感できます^^;;(たしかに「住宅地のどまんなかに核燃料処理工場を建てて平気な国は日本だけよ」って,言われてみればそうですよね^^;;)。
 でもそれ以上に,大活躍したのが泉田準一郎でしょう。前作『東京ナイトメア』あたりから,「一皮むけた」というか,「あっちのほうに行ってしまった」というか(笑),ますます公務員らしからぬ言動が目立ってきました。とくに敵方に対する容赦ない攻撃パターンは,まさにお涼の霊が憑いたかのようです(笑)。さらには,警察官僚出身の代議士平河勝英「この生意気な小娘(お涼)にしたがっているのは,なんのためだ」という恫喝に対して,「地球の平和を守るためです」と,しらっと答えてしまうところは,お涼の薫陶の賜物と言えましょう(笑)。
 一方,お涼の方はめずらしく「恋愛論」を披露,
「あたしが惚れてやるとしたら,敵と戦うとき安心して背中をあずけることのできる男よ」
とのこと。「惚れてやる」というところが,いかにもお涼らしいですが,これってもしかして伏線でしょうかね?

 それにしてもこのコンビ,『GS美神 極楽大作戦!!』美神&横山にますます似てきた感じですねぇ・・^^;;

00/01/29読了

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