山田正紀『女囮捜査官2 視覚』幻冬舎文庫 1998年

 首都高速・南池袋パーキングエリアで,12トントラックがタンクローリーに追突,炎上するという大事故が発生。その現場から病院に向かう救急車から,怪我人と救急隊員が姿を消した。事故現場で発見された女の右足とともに・・・。そして翌朝,首都高各所で女のバラバラ遺体が発見! 被害者は囮捜査官・北見志穂の大学時代の友人だった・・・。

 「女囮捜査官シリーズ」というか「五感推理シリーズ」の第2弾は「視覚」です。第1巻「触覚」が痴漢ネタだったので,「視覚」ならば「覗き」とかの類かなと思っていたのですが,う〜む,なんちゅうか,胸くそ悪くなるような(<下品!)「視覚」ですな・・・。う〜む,こっちの方面はどうも苦手です(あ,もちろん「痴漢」が得意というわけではありませんよ^^;;)。

 さてストーリィは,パーキングエリアでの大事故,救急車の消失,そしてバラバラ死体の発見と,派手派手しいオープニングで幕を開け,「つかみはOK!」といったところでしょう。そののちも,容疑者の逮捕,囮捜査で明らかにされる首都高の“闇”などなど,警察ミステリ風にアップテンポに展開していきます。多少展開のしかたに「都合がよすぎないかな?」と思われるところもないわけではありませんが,スピーディな展開でサクサクと読んでいけます。
 そしていよいよ犯人が判明,ついにクライマックスというところで,物語は大きく反転します。「ああ,普通の警察ミステリ風に,これで終わりなんだろうな」と思っていたところでしたので,このラストのツイストにはびっくりしました。ここらへんの,「え? それじゃいままでのは?」というような,一種の崩壊感と,そしてこれまで残されていた矛盾や疑問点が再構成されていくプロセスは心地よいですね。まるで本格ミステリみたい・・・って言ったらファンに怒られますね(笑)。
 ただ最後が少々バタバタしてしまうところがありますね。またラストのラストも,いかにもという感じです。アクション映画のエンディングみたいで,ちょっちできすぎというか,やりすぎというか・・・・? それと,舞台となる首都高速,冒頭に平面図が出てはいるのですが,田舎者には具体的なイメージがつかみにくい・・・・(T_T) もしかすると東京在住の方とはずいぶん印象が違うのかもしれません。

 今回の「解説」は,1巻の法水綸太郎に続いて我孫子武丸です。このセレクションはかなり意図的でしょうね。つぎは誰でしょう?

98/06/24読了

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