柴田よしき『禍都 City Catastrophe』トクマノベルズ 1997年

 未曾有の大災厄から10ヶ月,さまざまな謎を残しながらも,徐々に復興の進む京都。木梨香流もまた,紅姫によって時空の彼方に連れ去られた恋人・真行寺君之を思いながら,日々の生活を送っていた。だが,ふたたび不穏な前兆が・・・,京都で,琵琶湖で,そしてサイパン島で・・・・。妖怪たちよりも,はるかに異質で,そして凶暴な異形のものたちによって,京都は再度,蹂躙されることに!

 『炎都』の続編であります。本書の冒頭に,サイパン島の地図が載せてあったので,「おお,『怪獣大決戦』のつぎは,『南海の大決戦』だ!」と思ったのですが,舞台はやっぱり京都でした。
 妖怪,魑魅魍魎らを操る紅姫によって壊滅的な打撃を受けた京都に,ふたたび大災厄が襲いかかります。前回,妖怪たちを撃退した,香流,浜口美枝,十文字雄斗,クリフ・カールトンらが,ふたたび結集,妖怪どもよりも,たちの悪い“黒き神々”を相手にもう一暴れです。ただ前回が「緊急避難的戦い」であったのに対し,今回は最初から「さあ,戦うぞ!」といった気構え(?)が最初からあるので,ちょっと雰囲気が違うように思います(「パニックロマン」から「スペクタクルロマン」と,惹句も変わりましたし)。もっとも,あいかわらず男性陣は情けないですが(笑)。
 また前作が,荒唐無稽ではありますが,要するに「傍迷惑な三角関係(笑)」だったのに対し,今度は人類の起源やら,暗黒神話やら(諸星大二郎でしょうか),南海の古代文明やら,深宇宙から飛来した“神々”やら,えらく話がでかくなっています。
 前作の感想文で,「クトゥルフ神話みたい」というようなことを書きましたが,今回は,もうクトゥルフ神話そのもの,という感じです。チョイ役で,なにやら怪しげな「ジョナサン・カーター」という人物がでてくるのですが,これってもしかすると,H・P・ラブクラフトの作品に出てくる「ランドルフ・カーター」と関係あるのでしょうか?(巻末の参考文献に『クトゥルー神話大事典』というのもはいってますし・・・)。
 ま,それはともかく,今回の作品には,“ビシマ”と呼ばれる謎の物質が出てきて,京都の,ひいては人類の未来を左右することになるのですが,そ・・・その正体といったら・・・・。怒る人もいるかもしれませんが,わたしは「げっ,そこまでやるか?」という感じで,大爆笑してしまいました(笑)。「あんなもん」があったひには,京都はますます住みにくくなりますね。それでも京都人は京都にこだわるんでしょうねえ・・・。

 さて今回も,主人公たちの活躍で,京都は(ぼろぼろになりつつも)救われますが,なんだか「伏線引きまくり」といったエンディングです。これから続くことは,ほぼ間違いないでしょう。「炎」の次は「禍」,「Inferno」の次は「Catastrophe」,さてお次はなんでしょうか? 今回はヤモリの“珠星”が大活躍でしたが,できれば次回は木梨香流をもう少し活躍させてほしいですね。今回はちょっと“剛胆さ”が足りなかったような・・・。

 それからもうひとつ,登場人物のひとり「十文字雄斗」のネーミング,やっぱり「一文字隼人(仮面ライダー2号でしたっけ?)」に由来するんでしょうか?

97/09/07読了

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