船戸与一『蛮族ども』角川文庫 1987年

 白人支配のローデシアは,1980年,黒人国家ジンバブエへと生まれ変わった。富豪クリストファー・オズボーンは,全財産を金塊に変え,ジンバブエからの脱出をはかる。だが財産の国外持ち出しはジンバブエでは非合法。そこで金塊を列車に載せ,国境を強行突破しようとする。そのために粒よりの傭兵を雇うが,傭兵間には不和の火種がくすぶっていた。一方,金塊奪取を目論むゲリラ,そして金塊の国外脱出を阻止しようとする政府公安部。彼らが交錯するとき,アフリカの大地は血に染まる・・・。

 「冒険小説」の定義として,「主人公が,死にぎりぎりまで接近し,そこから生還すること」というようなのを読んだことがあります(なんで読んだんだったけなぁ?)。その定義からすると,この作者の描く作品は「冒険小説」とは呼べないのかもしれません。なにしろ登場人物の大半が,最後に血みどろになって凄惨な死を迎えてしまうんですから・・・(でも,定義なんてのはつねに変更されるために存在するようなものですし(笑))。それにしてもこの作者の作品は,ラストがいつも似たような感じですねぇ。「予定調和的な崩壊劇」というか・・・(語義矛盾?)。最初に『山猫の夏』を読んだときは,そんな展開と結末がひどくショッキングで新鮮でしたが,同じようなテイストを何度も読むと,正直なところ,ちょっと食傷気味な感じがします。この作品では,途中,輸送中の列車内で起こる連続殺人の謎といった「味付け」がされていますが,なんとなくとってつけたように思えてしまいます(伏線が引かれていると言えば言えるのですが)。また,白人過激派組織「ローデシア戦線」のエピソードが挿入されたりしますが,これも全体のストーリーの中で浮いてしまっているようです。そしてラスト。結局,これまで描かれてきたことは一体なんだったんだろう,と思わせる唐突で安直なエンディングです。もう少しエピソード間に有機的な結びつきがほしいところです。

97/12/02読了

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