竹本泉『夢見る七月猫(ジュライ☆キャット)』エンターブレイン 2003年
竹本泉『ハジメルド物語』エンターブレイン 2003年

 1981年の,この作者のデビュー作から,82年まで『なかよし』『なかよしデラックス』に掲載された初期作品(もう四半世紀前ですよ(笑))を,描いた年代順に並べて同時復刊した2冊です。『七月猫』には短編6編,『ハジメルド』には,表題作3話+短編2編が収録されています。

 まずは,その絵柄ですが,現在とは若干タッチが変わっているとはいえ,基本的には「この作者の絵柄」として定着しているものと言えましょう。しかしそれ以上に,掲載誌『なかよし』全体が持つ「絵柄的イメージ」(たとえば『おはようスパンク』とかに代表される)に,フィットしたものという印象が強いですね。かわいいというか,今で言えばロリ系と言うか(笑)(関係ないですが,別のコミックの「あとがき」で,この作者,和田慎二の作品を読んで,少女マンガ家を目指したと書いています。和田作品も,サスペンス作品以外を見ると,けっこうロリ属性ありますから,なんか,すごく納得しちゃいました(笑))。

 一方,内容はというと,『七月猫』所収の6編,いずれも,今からは想像もつかない(<誇大表記(笑)),コテコテの「ラヴ・コメ」であります(作者も「あとがき」で,「表題作以外全部学園もので,おまけにふつうの話だし」と嘆いて(?)います)。
 たとえば「あそんじゃダメよ!」「米太郎ちゃん愛してる」は,主人公のキャラクタはちょっと違いますが,ともに「幼なじみ→恋人」という,まさに「黄金パターン」のストーリィですし,同一の学園を舞台にしたシリーズもの「いちご☆もの思い」「ふりむけば☆べっかんこ」「恋心☆できごころ」では,かたや引っ込み思案の内気な少女の恋と,かたやボーイッシュで活発な少女の恋,という,これまた「ラヴ・コメの王道」と言えるような内容。思わず「この作者にも,こういう時代があったのだなぁ〜(°°)」と感慨にふけってしまう作品集です(笑)

 しかし,デビュー後1年たっての「ハジメルド物語」になると,少しずつ「地」が現れてきます(笑) 「ハジメルド」は,基本設定はラヴ・コメですが,舞台は原始時代!(といっても,サーベルタイガーと恐竜が共存するという,時代考証ムチャクチャの「原始時代」ですが(笑))。少女マンガ誌,それも比較的低年齢を対象とした雑誌で,こういった設定は,なかなかすごいものがあります。ただこの作者,最近のシリーズ作品でも,こういった舞台設定のエピソードや,古代遺跡をネタにした作品とかありますから,このへんに「根っこ」があるのかもしれません。
 そしてなんといっても,この作者の現在につながる作風が,「ルププ・パウ」であります。毎年,クリスマスのたびに家を空けるパパ,いったいどんな仕事をしているのか,ということで,娘のアリスとBFティムが探ったら,なんとパパの正体はサンタクロースだったという,トンデモナイ結末になっています。作者によれば,当時「怪作」との評言を得たそうですが,逆に今からすると,「あ,これこそ竹本泉!」と思ってしまえるのですから,この作者の,時代に迎合しない「地道な努力」(笑)には感心してしまいます。

 ところで,この作者のタイトルには「ハートマーク」が多用されています。『よみきり☆もの』1巻でも書きましたように,「ふりむいて☆べっかんこ」(<もともと「☆」)以外,「ハートマーク」は「☆」で代用しています。

06/01/03

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