竹本泉『よみきり☆もの』6巻 エンターブレイン 2004年

 以前,ある方が,当サイトの掲示板で「野放し作家」なる語を書き込みました。要するに,自分の「趣味」を前面に押し出し,編集者も,読者も,なかばあきらめつつ楽しんでいる,といった感じの作家さんです(そのときは具体例として植芝理一などの名前があがりました)。
 最近,新刊はもちろん,古本屋さんでも,この作家さんの作品を見つけると,シリーズものの途中でも,条件反射的に買って読んでいますが,そのスタンス・指向性の「変わりなさ」を見るにつけ,この作家さんも,そんな「野放し作家」のひとりではないか,などと思うようになりました。でも,一見「金太郎飴」的でありながら,それぞれの作品,それぞれのエピソードに独特の面白味が感じられるところが,この作家さんの魅力なのでしょう。

「かける4」
 転校生は三つ子だった…
 マンガのシチュエーションで,転校生が,在校生(主人公?)によく似ている,そこから物語が転がりはじめる,というのは,ときおりありますが,それが三つ子だったら,という発想のユニークさが楽しいですね。さすがに学校側としては,三つ子をひとつのクラスに入れるわけにはいかなかったのでしょうね。それこそ「混乱の極み(笑)」
「太陽から45センチ」
 小柄な琴子は,暑いのが大の苦手で…
 いや,上のように梗概(?)を書いてしまうと,それだけの話なんですが(笑),暑さ云々よりも,身長の違いによる「視点の違い」という方が,なんか気になりました。一度,仕事で大型トラックの助手席に乗ったことがあるのですが,ぜんぜん「見え方」が違う。ですから,中澤くんに背負われた琴子ちゃんが,「おほほほ」と威張りたく気持ちも,わからない訳じゃない(笑)
「ふやけるお年頃」
 美絵は,お風呂が大大大大大好きで…
 根がせっかちなせいか,あんまり長湯をしません。ですから,追い焚きできない今のお風呂で,毎日入ると,水道代がもったいないな,と思いつつ,シャワーだけ,というのも,いまひとつ落ち着かないのは日本人だからでしょうか? そういや,知り合いからスーパー銭湯の割引券もらったけど,まだ行ってなかったな…(°°)
「りんごのひみつ」
 そのリンゴは,落ちてるのか? 置いてあるのか?
 作者曰く「ブックスパラダイス」と同じ学園とのことで,どうやら『アップルパラダイス』とも同じようですね(「聖林檎楽園学園」)。ラヴコメを標榜しながら,ぜんぜんそれらしくな本シリーズですが,本編は,ちょっとそんな雰囲気がありますね。リンゴを食べて苦しんでいる(?)梅ちゃんを助けた広岡くん「これ以上ないくらい的確だよな」って,にぶすぎ(笑) それとラストで「りんごのひみつ」が明らかにされるミステリ的(?)着地も,個人的に好きです。本集中,一番楽しめました(わたしの好きなキャラ江崎まりあん嬢が,ちょっとだけ顔を出しているせいもありますが(^^ゞ)。
「ぼんよりの連続」
 ぼんより〜んのへろへろ〜んな桐島小島は…
 自分はけっして体育会系とは思えないんですが,やはり「ぼんより〜んのへろへろ〜ん」を見ると,気になって仕方がないわたしには,「曲がっているものとか見ると,まっすぐにしたくなるタイプである富士森くんの気持ち,じつによくわかります(笑) 
「生徒会と奇妙な音」
 奇妙な音が立て続けに発生する原因を,生徒会副会長は推理するが…
 作者自身も言っているように「なんでもあり」の本シリーズ,こんなわけのわからない展開でもかまわないのかな,と思っていましたが,ラストでのSF的オチにちょっとびっくり。まぁ,「夢オチ」のSFヴァージョンとも言えなくもありませんが…(^^ゞ でもたしかに,SFにありそうな「読者参加型フィクション」も,その読者のキャラによっては,とんでもないモノになりそうですね(笑)

04/03/19

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