高橋葉介『海から来たドール』朝日ソノラマ 1999年

 前回配本の『宵闇通りのブン』の感想文で,「次回配本は『猫夫人』」と書きましたが,本屋に行ったら本書が置いてありました。「嘘,書いてしまったぁ!!」と焦りましたが,『宵闇通り・・・』を見ると,たしかにつぎは『猫夫人』と明記されています。要するに,変更になったんですね(笑)。しっかりせいよ! 朝日ソノラマ!!(<えらい,強気^^;;)

 とまぁ,そんなことはどうでもよく,今回の作品は,個人的にはじつにうれしいですね。というのも,本書所収の「海から来たドール」「海から来たドールII」「真琴グッドバイ」は,いずれも以前一度だけ読んだことがあって,これまで読み返す機会のなかった作品だからです。ですから,予告と違ったことは許してあげましょう(<ますます強気^^;;;;;;;;;)。

 さて「海から来たドール」は,南海の名もなき孤島が日本へやってきた少女ドールが巻き起こす,ファンタジック・コメディとでもいいましょうか。小麦色の肌の水着美少女を,作者が描きたかっただけ,とでも申しましょうか(笑)。まぁ,ドールがかわいいからいいでしょう(<う〜む,ヲヤジ的発想ですな(笑))。シリーズとして続けば,ドールと,トオルとのラヴ・コメディに進展しそうな感じの作品ですね。それにしても,トオルの顔立ち,怪奇編の夢幻魔美也から毒気を抜いたような雰囲気ですね。

 さてもう1編の「真琴グッドバイ」は,1981年から82年にかけて『デュオ』(うわぁぁ・・・懐かしい・・・)に掲載された作品です。
 で,冒頭に「じつにうれしい」とか書いておきながら,じつはこの作品,ヨースケ作品としては異色というか,なんというか,「う〜む」とちょっと首を傾げてしまう作品なのです。
 主人公の真琴は,酔っぱらうと屋根に登ってしまうというヘンな癖を持った女子大生。彼女の前にふたりの男性が現れます。ひとりは,なにを考えているのかよくわからない「タリラリラン」薫くん。もうひとりは,曲がったことが大嫌い,人生まっすぐ一直線の「好青年」石渡くん。スラプスティク的味付けは,ヨースケ風ではあるのですが,この3人をめぐる,じつにオーソドックスなラヴ・コメなんですよね,この作品は。描線も,この作者独自の「筆線」が影を潜め,少々一本調子な,メリハリのないタッチになっています。
 この作者は,いまでこそ,「幻想と怪奇」風,あるいは「奇妙な味」風の短編作家としての評価を確立してはいるものの,やはり試行錯誤の時期というのはあったのでしょう。あるいは,編集者の方からも,初期作品とは違うテイストの作品が求められたのかもしれません。発表年も,『マンガ少年』時代のすぐあとに来るようですから・・・
 そんなわけで,この作品に対しては,人それぞれの感じ方があるかもしれませんが,やはり,ひとりの作家の軌跡を考える上で,興味深い作品だと思います(<今回は,最後までえらそうですね。なんなんでしょう,この無根拠な強気は・・・^^;;;)

98/06/25

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