和田慎二『少女鮫』3・4巻 白泉社 1997年

 FBIから,沈没船に積まれた大量のヘロインの回収を依頼された紫堂ら。しかし,ヘロインを奪取しようとするマフィアが鮫に襲われる光景を眼にした彼らは,真の敵が鮫であることを知る。さらにアルは,そこで巨大な鮫の存在に気づく。紫堂ら,マフィア,巨大鮫の静かな,しかし壮絶な戦いが海の底で繰り広げられる・・・。
 ・・・・・というわけで,3巻は2巻の続き「第3部 海洋編」です。
 ううむ,ここのところ1970年代の,比較的短めの和田作品をずっと読んでいたせいか,ちょっとストーリィの展開が冗長な感じがしてしまいますね。とくに,紫堂とアルが,鮫に対抗するため,有能な鮫狩りのプロ・キュアンを探しに地中海へおもむくエピソードは,紫堂というキャラクタを描き出すという点では,たしかにそれになりに意味があるのかもしれませんが,この「海洋編」全体の中では,ちょっと浮いてしまっている感じがしないでもありません。せっかく雇ったキュアンも,あんまり活躍しているようには見えませんし・・・。
 まぁ,10巻も20巻も続く大長編と,1970年代の作品に多かった前編後編といった体裁の短編あるいは中編とでは,当然エピソードの描き方とかは違うでしょうから,完結してみないとなんともいえませんが・・・。
 それと「アル=ザ・シャーク」はちょっと恥ずかしいぞ(笑)。
 ところで,3巻巻末に収録されている「『少女鮫』通信 vol.3」によると,「少女鮫」というタイトルは,大沢在昌の『新宿鮫』から来ているそうです。

 さて4巻は,大海原から一転,大病院を舞台にした「第4部 検診編」です(このサブタイトルもどうにかなりませんかねぇ,せめて「病院編」とか・・・)。
 戦場で垣間見せるアルの謎の表情と,甥の石動医師が彼女をあずけるときに漏らした言葉(「日本のどこにも平穏な場所はない」)に疑問を持った紫堂は,スイス・ジュネーヴの大病院で,彼女に対する徹底した検診を行うことを決意する。しかしジュネーヴでは連続幼女殺害事件が起こっており,さらに紫堂の宿敵“銀狐”ミハイル=フェルガーがドイツの軍事刑務所を脱走,紫堂を狙ってスイスに潜入していた。いま,紫堂とアル,謎のサイコ・キラー,そして銀狐が,三つ巴の戦いが始まる・・・。
 う〜ん,う〜ん・・・・。このエピソードもなぁ,「海洋編」に比べて緊張感はあるんですけどねぇ。結局,アルが秘める謎が明らかにされなかったのは,今後の展開への「引き」だからいいとしても,ラストの大立ち回りが,どうも納得いかない。
 サイコ・キラーの襲撃から逃れたアルは,自室へと戻りますが,シルバーたちからもらったベレッタがない! 一瞬パニックに陥るアルですが,(おそらく)クマのぬいぐるみに隠されていたベレッタを発見,サイコ・キラーに立ち向かう,という展開のですが・・・。ぬいぐるみの中にベレッタを隠したのは(たぶん)紫堂なんでしょうが,なんで隠したのか,よくわかりません。アルもすぐに気づくのもなんか不自然・・・。これが「う〜んの1」。
 「う〜んの2」は,下水道でサイコ・キラーと戦う紫堂,長剣を取り出した殺人者は,紫堂に襲いかかり,彼は絶体絶命! ところが場面変わって,殺人者に襲われ危機一髪のアルを,背後から紫堂の銃弾が・・・。思わず「え? なんで?」と思ってしまいます。下水道での殺人者と紫堂との戦いはどーなったの? 紫堂は傷ひとつ負ってないようなんですが? 
 ああぁぁ〜〜,納得いかない! もの足りない!
(ページ数がうまく調節できなかったのかなぁ・・・・)

 なんだか今回は文句ばっかりになってしまいました・・・・(T_T)

98/02/25

go back to "Comic's Room"