和田慎二『少女鮫』1・2巻 白泉社 1996年

 帰国子女・紫堂涼子が転入した私立桜ノ宮高校。そこでは,立て続けに生徒が殺害され,秘かに麻薬汚染が広がっていた。麻薬に侵されたクラスメートを救うため,涼子がみずからの封印を解くとき,彼女は一匹の若き鮫となる・・・。

 麻宮サキの壮絶な闘いを描いた『スケバン刑事』終了後,クルトの冒険ファンタジィ『ピグマリオ』,コメディ色の強い(といってもまだ2巻までしか読んでないですが)『怪盗アマリリス』を経て,ふたたび少女を主人公としたハードな世界が始まりました。
 新しい主人公の名前は紫堂涼子。一見とろそうですが,ひとたび闘争本能に火がついたとき,彼女は強力な“デストロイヤー”に変身します。初回の相手は,中毒性のあるスパイスを麻薬代わりに売り捌こうとする“虎(タイガー)”を名のる男。ひそかに麻薬を作る製菓工場をたったひとりで火の海に変え,ナイフひとつでつぎつぎと敵を倒していく・・・。おまけに,足場のない海からあんな風に飛び上がるなんて,シンクロナイズド・スウィミングの選手も真っ青。う〜む,この主人公,なんだかすごすぎるぞ(^^;;(麻宮サキも真夏に汗をかかないという,汗っかきのわたしから見れば人間離れした(笑)キャラでしたが・・・)。

 以上が第1部で,1巻巻末の「『少女鮫』通信 vol.1」によると,現代アクションものの新シリーズとして立ち上げたようですが,上記の作品執筆の際の“裏設定”を連載として始めたのが「第2部 戦場編」です。
 要するに,紫堂涼子が,なんで「こーゆーこと」になったのか,というお話です。紫堂涼子の父親は,傭兵隊長・紫堂貴広。彼は,甥の石動克也から「いまの涼子には,この日本のどこにも平穏な場所はないんです」という言葉とともに,涼子をあずかります。克也の謎めかしたこのセリフ,2巻に出てくる「久須見病院」とやらに関係しているんじゃないかと,想像してます。最近流行の“DNA”絡みだろうか。克也はウィルス関係の医者らしいし・・・,ふむふむ(<ひとりで納得している)。
 さて紫堂貴広は傭兵ですから,涼子が連れていかれるのは,当然,戦場ということになるわけです。最初は,どうも南米くさいベドニア国国境付近の密林地帯,ついでアフリカじゃないだろうかというアザラ共和国での捕虜救出作戦,そしてドイツの古城から,テロリストに誘拐された社長令嬢を救出する“クレオパトラ作戦”へと続きます。作者が一番力を入れたと思われるのが,この“クレオパトラ作戦”ではないでしょうか。“鳴かない猫”なんて,じつにこの作者が好きそうな感じのキャラ(?)ですね(笑)。でもって,このエピソードの敵役,テロリストの“銀狐”ことミハイル=フェルガーというおっさん,今回は紫堂の“年の功”の勝ち,といったところですが,なかなかいい味出してます。涼子たちともうひと絡みありそうな気がします。それにしても,“エスガイア”の突撃社長(笑),こんな人の部下はたまらんやろうなぁ・・・。

 2巻のラストは「第3部 海洋編」。マイアミのエルミナ島が舞台。FBIの依頼で,沈没船から麻薬組織が引き上げたヘロインを奪取しようという作戦です。せっかくの「海洋編」ですが,主人公が10歳ですからねぇ,いまいち楽しみがない(<おぢさん!)。
 まあ,それはともかく,「少女鮫」というタイトルからすると,この「海洋編」が,ストーリィのなかで,けっこう重要な位置を占めるのかもしれません。さてさて・・・・。

98/02/10

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