和田慎二『怪盗アマリリス』1・2巻 白泉社 1991年

 昼間は普通の女子高校生・椎崎奈々は,じつはもうひとつの夜の顔を持っていた。その名も“怪盗アマリリス”,若いながらも,狙った獲物は逃さない大泥棒。元怪盗“白水仙(ナルシス)”のママと,お手伝い兼機械工作担当スガちゃんに見送られ,今宵もアマリリスが夜の町を駆ける!

 というわけで,“個人的に火のついた”和田慎二の第2弾は『怪盗アマリリス』です。
 このアマリリスというキャラクタは,たしか以前に短編があったのではないでしょうか? アマリリスの故郷にある食品会社が,食べ物に依存性のある麻薬みたいのを混ぜて支配しようとする,とかいうお話だったような・・・(記憶あやふや)。
 この作者,短編でつくったキャラクタを長編にするというパターンがけっこう多いようですね。『スケバン刑事』「校舎は燃えているか」という短編が先行してあったと思いますし,最新作(?)『少女鮫』も短編→長編という展開のようです。作者(と編集者)としてはやっぱり“おいしいキャラ”というのは,もったいないと思うのでしょうね。

 このシリーズの眼目は,アマリリスが狙った獲物を盗み出す,奇想天外な“あの手この手”でしょう。1・2巻でのお気に入りは,最初のエピソード「蝶の夢」の大沢家から“蝶の燭台”を盗み出すトリックです。すでに盗まれたと思わせて,獲物の入った金庫を開かせる,というトリックは,“怪盗もの”というか,泥棒ミステリ(って,いうのか?)にはしばしば見られるものではありますが,一種“コン・ゲーム”みたいで楽しいですね。
 2巻に収録されている「青銅の竜」も,巨大な青銅製の竜の像をどのように盗み出すかにあたって,それだけの巨像が,どのようにして博物館の中に入れられたか,という謎が最初に提出されるあたり,展開がミステリアスです。まぁ,謎解きは荒唐無稽なものですが(笑)。もう少し“竜”についての蘊蓄というか理論武装があると,もっとおもしろかったんですがねぇ。

 このシリーズ,隣にアマリリス担当の刑事が引っ越してきたり,「アマリリス騎士団」なるおちゃらけ集団(笑)が結成されたりと,コメディ色も盛りだくさんです。森村海くんとのラヴ・コメもありそうです。それから『スケバン刑事』では,単なるお茶くみだったスガちゃんも,手に職を持ったようで,活躍しそうですね(このスガちゃんというキャラクタ,和田作品ではけっこう古株ですよね。モデルでもいるのでしょうか?)。
 全14巻ですから,ゆっくりと読んでいきましょう。金澤さん@書庫の彷徨人によれば,『銀色の髪の亜里沙』の亜里沙も特別出演するエピソードがあるそうです。楽しみです。

 それにしてもアマリリス,怪盗のくせに,民間人に素顔をさらしすぎでないの?(笑)

98/02/06

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