柴田昌弘『龍の砦』2巻 学研 1998年

 さらわれたナギリを奪還するため,マサルたちは迅竜丸で,松浦水軍の海賊大将・氷虎を追う。単身,敵船に乗り込んだものの,あっけなく捕縛されてしまったマサルは,意外なことを口走る。「あんたらの仲間にしてくれ」と・・・ いったいマサルの真意は? そしてナギリの運命は?

 というわけで,戦国時代の南海を舞台にしたSF海洋ロマンの2巻目であります。
 前巻の感想文でも書きましたように,こういった「海洋もの」の作品は,小説,コミック問わず好みですので,本巻前半,さらわれたナギリの救出をめぐるエピソードは,捕らわれたマサル,その彼の裏切り(?),燃え上がる船をバックにしての死闘,と,息も尽かせぬ展開で,「さぁ,いよいよ盛り上がって参りました」という感じで,わくわくドキドキしながら読み進めていきました。

 が・・・・半ばあたりに来ると,どうも様子が変わってきます。なにやらマサルの運命にからむモンスタのようなものが顔を出し始め,そして舞台は突如現代へ! 戦国時代へタイムスリップする前のマサル=松浦昌のガールフレンド・多美の前に現れた昌そっくりの少年・竜海慎。彼は,多美を南海の孤島へ有無を言わせず連れていきます。彼の祖先が住んでいたという孤島で多美が見つけたものは,450年前の古船の残骸とそこに刻まれた文字――「多美 いつの日かきっと 昌」
 「わぁ,なんだ? なんだ?」と思っているうちに,物語は急速に収束モード。マサルとナギリをめぐる謎が解かれ,彼らの“最後”が語られます。そしてラストでは,沖縄の海底で見つかったという「超古代文明」の海底遺跡やら,沖縄のニライカナイ信仰やら,浦島伝説やらへとつながっていき,慌ただしくエンディング・・・
 をいをい,なんじゃこりゃぁ・・・・と,しばし茫然自失してしまいましたが,作者の「あとがき」を見て納得。この作品も,この前休刊してしまった『コミック ノーラ』掲載作品だったんですね。おそらく休刊を目前に控え,強引に物語を終わらせようとしたのでしょう。で,最後の「海底遺跡」のエピソードは,さらに休刊後,コミック化にあたって加筆された部分のようです。

 う〜む,期待していた分だけ,なんとも残念ですね。主人公たちの活躍をもう少し見たかったです。現代との結びつきも,最終的には同じようなものになるのでしょうが,伏線なり,前振りなりがあれば,もっと盛り上がったんでしょうけれど。仕方がないですね。
 でも作者も忸怩たるものがあるようです。できれば,構想新たに別の雑誌で復活してもらえませんかねぇ。潮出版社とか,そうゆうの得意なところもありますし,それにこの作者,南海ものはけっこう好きなようですから・・・。

98/12/10

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