高橋葉介『猟鬼博士』朝日ソノラマ 1999年
文庫版「ヨウスケの奇妙な世界」もはや16巻目であります。短編主体の作家さんで,これほどの作品数を発表されている方というのは,そう多くはないのではないでしょうか? それにしてもさすがに16巻目ともなれば,発表年は1980年代の後半から90年代にかけてで,「比較的最近」と感じてしまうのは,わたしの歳のせいでしょうか?(笑)。
「猟鬼博士」
“猟鬼博士”と,その助手ユン・ピを主人公とした連作です。「見世物小屋」「街になった男」「崖の上病棟」の3編よりなり,いずれもグロテスク・ホラー・コメディといった内容です。
猟鬼博士は,登場したときは,けっこうおどろおどろしい顔つきなのですが,しだいにコメディっぽくなっていきます。ちょうど『夢幻紳士』の魔美也のおとーさん狂四郎と同じパターンですね(笑)。助手のユン・ピは,一見女の子ですが,足の間に「ぶらさがっとるモン」(=^^=)を持つ,男だか女だかわからない身体。このふたりが,奇妙な人物やら,わけのわからないもの(半分は自業自得とも言います)に遭遇するというお話です。わたしが好きなのは「崖の上病棟」で,かなりあぶないネタを扱いながらも,思わず笑ってしまいます。とくに「陽気な人面瘡」がグロテスクの極みといった感じで,いいですね^^;;
「たんぽぽ姫」
「たんぽぽ姫」という,ちょっと(?)Hな女の子(?)を主人公とした(この作者にはめずらしい)「お色気コメディ」です。2編よりなりますが,それぞれが同年(1985年)に別のふたつの雑誌に発表されたという変わり種です(もしかして,ネタがなかったのかな?^^;;)。後半のエピソード(というのかな?)の,ちょっとしんみりさせておいて,それを吹き飛ばすような陽気なラストがにんまりさせられます。
「叫ぶ女」
“私”は叫び続ける・・・怖くて声も出なかった「あのとき」の分まで…
5ページよりなるショート・ストーリィらしく,ワン・アイディアをすっきりとまとめているように思います。
「死霊教師」
とある学園に転入して以来,悪霊となってしまった少女。そこに教育委員会から派遣されたひとりの女教師が…
映画『エクソシスト』を元ネタにした,ブラック・ホラー・コメディ。オープニングはシリアス風なのですが,しだいに「壊れて」いって,なんだかもう,やけくそという感じのラストが笑っちゃいます(笑)。
「井戸の怪」
作家の“あたし”が借りた一軒家。曰く因縁を持つその屋敷で見つけた日記に書かれていたことは…
オーソドックスな「お化け屋敷」ネタといったところです。主人公の女性作家は,「骨」(『夢幻少年 マンガ少年版』所収)に出てきたキャラクタと同一人物ではないかと思われます。
「竜神伝説」
身体に龍の鱗のような痣を持つ4人の男女が集まったとき,世界は…
この作者にはめずらしい,というか,(きつい言葉を使うと)この作者らしくない,というか,異色作・・・なのでしょうねぇ…やっぱり。この手の話を,このページ数でやろうすること自体,ちょっと無理があるのでは……^^;;
「遠い道」
学校からの帰り道。“僕”はいつも家族と一緒になる…
短いながら,この作品,好きなんですよねぇ,わたし。最初読んだときは,いまひとつ訳がわからなかったのですが,わかるにつれ,冒頭とラストの日常的な光景が,幻想的でやるせないシーンへと反転し,じんわりと主人公の哀しみが伝わってきます。
99/11/05
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