岡崎二郎『NEKO』2巻 小学館 2000年

 いやぁ,てっきり1巻で終わってしまったかと思ってました^^;; このせわしい世の中で,2年ぶりの第2巻というのも,なんだかすごいですね。でもこれで最後なのかな?
 ところで,本書のタイトル,奥付では「NEKO」なんですが,表紙カヴァはどう見ても「Neko」あるいは「NeKo」なんですよね。ここでは奥付に従いましたが,どっちが正式なのでしょうかね?

「第1章 チビネコ物語」
 孤高のノラネコ・グレイの元に,彼を“パパ”と呼ぶ子猫が現れ・・・
 猫に限らず,ペットとして生まれ,ペットとして育った動物というのは,その動物本来の本能を失ってしまうことがあるようです。ただ人間の側が,そんな本能を失った動物を「本来のもの」と思ってしまうのは,大いなる勘違いなのでしょうね(ちょうど,このチビの元飼い主みたいに・・・)。
「第2章 多摩丘動物園の事件簿」
 ガゼルカモシカの“ランボー”が元気がない。原因は背中の傷にあるようなだが・・・
 ・・・って,「ガゼルカモシカ」って書いちゃったけど,それでいいのかな?^^;; 動物園ではじめてトラを見たチョメが,その“怖さ”を想像するところがかわいいですね。
「第3章 多摩丘市の一番“熱い”日」
 猛暑の日,行方不明になった子猫を探しに出た亜紀たちは,思わぬ事故に遭い・・・
 今では滅多にないのでしょうが,わたしが子どもの頃には,ゴミ捨て場に棄てられた冷蔵庫やキャビネットに子どもが閉じこめられるという事故がけっこうあったことを思い出しました。作者ももしかして同世代なのかな?
「第4章 頭上の敵」
 ノラネコと人間が共存する多摩丘市。ところが意外な敵が出現し・・・
 「第3章」もそうだったのですが,この巻には「カラス・ネタ」が多いですね。都市部でカラスの数が異様に増加しているという話を聞いたことがあります。なまじ頭がいいだけに,退治するのもたいへんなようです。「ニャア」と鳴くカラスだったらかわいいですが(笑)。
「第5章 美こそはすべて」
 わがままな飼い主のわがままな猫・ジュリアン。ところが飼い主がネコアレルギィになったことから・・・
 わたしの友人にもネコ・アレルギィの人がいますが,ネコがネコ自身のアレルギィになるなんてこともあるんですね。ちょっとひねったラストが「にやり」とさせられます。
「第6章 深夜の大冒険」
 ネコのトッポから,多摩丘動物園のライオンを故郷の千葉まで連れていくことを頼まれた亜紀たちは・・・
 先日,アルバイトの学生がライオンに咬まれ死んでしまったという事件がありました。そのライオンはすぐさま射殺されたという話を聞いて,一方で仕方ないと思いつつ,その一方でどこか腑に落ちないものもありました。その事件と通じるものがあるエピソードです。亜紀たちとライオンがタクシに乗ったり,コンビニで買い物したりするところが楽しいですね。
「第7章 幻の銀ネズミ」
 ネコたちの間で囁かれる幻の銀ネズミ。それを食べれば100年寿命が伸びるという・・・
 おそらく「銀ネズミ」そのものは,それほど大したことないのかもしれません(作者の注釈にもあるように「銀ネズミ」というのは一種の“通り名”のようですから)。でも,それをネコの目を通すことで,不思議な話に仕立て上げてしまうところが,この作者の力量なのでしょう。本巻で一番楽しめました。
「第8章 幸せ見つけた!」
 東京からきたネコに,東京は素晴らしいところだと聞いた田舎のネコの兄弟は・・・
 「人間にとって純血は,宝石のように大事なものなのよ」というセリフは,なんだか複雑な想いにさせられます。さまざまな種類を交配させて,いろいろなタイプのペットを作り出す一方で,「純血」をことさらに大切にするというのは,考えてみればすごい身勝手なことですよね。ところで,イリオモテヤマネコを狙う悪徳ペット商が,観覧車から落ちるシーンって,『ダイハード』のクライマックス・シーンを意識しているように思います。

00/02/21

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