浦沢直樹『MONSTER』Chapter9 小学館 1998年

が〜ん!が〜ん!が〜ん!が〜ん!が〜ん!

 嗚呼! この巻でいよいよクライマックス,ミュンヘンに集結するテンマ,ニナ,ルンゲ,そしてヨハン,大学が炎に包まれるとき,彼らの最後の決戦で幕が閉じると予想していたのです(こちら参照)。が,が,がががが・・・・
が〜ん! が〜ん! が〜ん! が〜ん!(<しつこい!)
 ものの見事に予想は外れてしまいました(笑)。
 たしかに,ヨハンとニナの出生の秘密は,いまだ不明なわけですから,終わろうにも終われないのでしょうね。ふむふむ・・・。
 でも,やっぱりクライマックスのひとつであることは間違いないでしょう,表紙にも「This story is rushing to a climax!!」と書いてあるしさぁ・・・・(<負け惜しみ)。

 ま,それはともかく,フリードリヒ・イマヌエル校図書館でヨハンを狙撃しようとするテンマ,絵本『なまえのないかいぶつ』を探し出してくれたロッテから,ヨハンの所在を知り,図書館へ向かうニナ,彼らの動きを把握し,それを楽しむかのように図書館に火をかけるヨハン,パニックの中で彼らはふたたび相まみえる! テンマは,そしてニナは,銃の引き金を引くことができるのか! というわけで,すさまじいまでの緊迫感にあふれる第9巻です。
 やはりここらへんの盛り上げ方は,この作者,なんともいえず巧いですねぇ。ついつい先走って一気にクライマックスに持っていきたいところを,けして慌てず騒がず,複数の登場人物の行動を丁寧に描き出し,また,人を救う「医者」であるテンマが,「殺人」を犯すことにためらいを感じるシーンを,彼の過去の記憶を挿入することで,じりじりとロープを絞り込むように緊張感を高めていきます。
 そして炎の中,ヨハンに銃を向けるテンマ,「さあ,ここだよ」と言わんばかりに,みずからの額を指さすヨハン。そこに現れたニナが叫びます。
「Dr.テンマ! あなたは撃っちゃいけない!」
 このシーンを見たとき,そうだ,そうなんだ,と納得しました。テンマ,ニナ,ヨハンの運命の3人が相集うとき,ニナはやはりこのセリフを言うキャラクタだったのですよ。ニナのこのセリフの行方が定まらない限り,この物語は終結しないのでしょう。ふむふむ(<こればっかりや!)。

 さて,パニックの中で姿を消したヨハンとテンマ。一方,ニナはDr.ギーレンのカウンセリングで記憶の一部を蘇らせます。
「おとぎの国の三匹のカエル」
 謎の言葉の意味を思い出したニナは,Dr.ワイヒマンたちの姿を消します。一方,テンマはドレスデンに姿を現し,そこでシューバルトから,ヨハンに関する情報を得ます。
「双子の母親は,プラハで生きている」
 物語はヨハンとニナの故郷(?)チェコへ飛ぶのでしょうか? チェコといえば・・・・,いや,もう予想するのはよしましょう。読者の(少なくともわたしの)予想を超えて,はるかに盛り上がる物語のこれからの展開をただただ楽しみにしましょう。
 さぁ,もうなにが起きても驚かないぞぉ!(笑)

98/06/05

go back to "Comic's Room"