むんこ『まい・ほーむ』1巻 竹書房 2005年

 堀川舞は小学3年生。子どもっぽい,というより,子どもそのものとお父さんに,愛想をつかしてお母さんが家を出て行ったあとは,お父さんとふたり暮らし。今日もまた,朝起きたらお弁当を作り,会社に行きたがらないお父さんを送り出し(叩き出し),それから登校…「娘手ひとつで親父育てる」毎日です…

 『らいか・デイズ』に続く,この作者の2冊目のコミックです。「しっかり者の小学生」という設定は,春菜来華に通じるものがありますが,こちらは来華ほど「スーパー」ではありません(算数が苦手なようですし(笑))。しかし小学生ながら,家事全般完璧で,文字通り「大きな子ども」のお父さんを,振り回されながら,御してしまうところは,やはり「スーパー」かもしれません。
 で,そのお父さん,誰もが嫌がるお花見の席取りを,トランプ・ゲーム・おやつ持って嬉々として出かけたり,暑いからといって,会社の屋上でビニール・プールで水浴びしたり,と,このリストラの嵐が吹き荒れる不況下で,よくぞ会社が馘首にしないものだと不思議なほどのスチャラカ・サラリーマンです。
 要するに「ダメ親父」なのですが,世の「ダメ親父」の定番「飲む・打つ・買う」という陰惨ドロドロのところがまったくなく(まぁ,買い物をまかされて,おかしとゲームに使ってサイフを空にしてしまうという程度です(笑)),いかにも子ども子どもした「ダメぶり」が,じつにかわいいのです(ピーマンが大嫌いで,松茸よりもカレーが好きという,味覚まで「子ども」です(笑))
 またその「ダメぶり」「子どもぶり」は,たしかに同僚だったら一緒に仕事をしたくないタイプではありますが,「大人がやってはいけないけど,やれるんだったら,自分もやりたいこと」を体現しているようなところもあります。さらに子どもからすれば「一緒に遊んでくれる楽しいお父さん」でもあったりして,妙に憎めません。
 つまり,暗くなりそうなシチュエーションながら,「スコーン」と突き抜けたようなお父さんのキャラクタと,彼に対して容赦のないツッコミをする娘との,ドタバタ・コメディに仕上がっていると言えましょう。

 それと忘れてならない本編のもうひとつの魅力は,ときおり「しみじみ系」「ほのぼの系」のエピソードが,さりげなく挿入される点にもあります。たとえば「怖い夢」を見たと言って眠れなくなったお父さん,「夢ぇ!?」とあきれたように訊く舞に,「舞もいなくなった夢」とポツリと答えたりします。あるいはまた,お母さんが残したハンカチを無くしてしまい悲しむ舞を見て,お父さんが夜中に探し回るといったエピソードなど,ドタバタの背後に隠れているものが,すっと顔を出すようでしみじみとさせられます。
 「ほのぼの系」で好きなお話は,雪が降ったお正月,「雪が積もっている」とはしゃぐお父さんに,「正月くらいゆっくりしようよ」と答える舞,ところがお父さんがカマクラを作ると,思わず一緒に入ってしまうというエピソードです。
 いわば,「子ども」であるお父さんが「大人」の顔を見せる「しみじみ系」と,「大人」の舞が「子ども」に戻る「ほのぼの系」といったところでしょうか。

 巻末に,麻雀シーンの出てこない麻雀マンガ(笑)「代打ちDAUGHTER」が収録されています。

05/08/07

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