高橋葉介『KUROKO−黒衣−』1巻 秋田書店 2001年

 少年少女たちの間で囁かれる,ひとつの都市伝説−時代がかった衣装を身にまとい,依頼を受ければ駆けつける男女ふたりの“憑き物落とし”・・・彼らの名前は「KUROKO−黒衣−」・・・

 といわけで,『学校怪談』に続く『少年チャンピオン』連載の新シリーズです。主人公は,真紅郎紫奈乃のふたりの「KUROKO(黒衣)」。不可思議な衣装(まさに黒子の衣装)を身につけると,超常的な力を発揮する「憑き物落とし」です。で,ツッコミ役の真紅郎とボケ役の紫奈乃というカップリングですが,どうやらふたり合わせて「半人前」(笑),いろいろと失敗を重ねながらも,なんとか妖怪を退治していくというパターンのようです。
 このほか,真紅郎の家に居候(?)している,この作者お得意の強烈老人パワーの塊のようなおばばやら(「甘いわ 真紅郎!」とアップで迫るあたり,夢幻狂四郎と同じノリですね^^;;),狂言回しと思われるゴシップ雑誌『フォークロア』の女性記者杉下さんやらが絡んできて,スラプスティク色も健在です。ただ,まだちょっとしか顔を出していませんが,真紅郎の妹黄華(きっか)は,なにやら曰くありげな設定で,裏にはけっこうシビアなものが隠されている気配です。

 最初の第1話は1回読み切りですが,そのあとはいずれも3回連載でワン・エピソードといった体裁です。
 「第1話 黒衣都市伝説」は,まぁオープニングの「挨拶興行」といったところ。浴槽の中で嗤うバラバラ死体の女性はエグイですねぇ。それにしても,真紅郎,自分の必殺技の名前ぐらい憶えておくように(笑)。
 「第2〜4話 教祖復活」はカルト教団ネタです。こちらもなかなかグロテスクですが,敵役で出てくる教祖の娘(キョウコちゃん)は,「魔性の少女」風でいいですね。ぜひ復活して欲しいところです。ところで,教祖の「仮面」,なんか諸星大二郎「オンゴロの仮面」に似てません?
 「第5〜7話 邪悪なる祈り」は,異界に繋がるコイン・ロッカーという,どこか都市伝説にありそうなお話。おばばの書いた「お札」には笑っちゃいます。コンビニでコピーしても効力があるところはなんともすごいですが(笑)。でも,「ベルゼバブ」といえば,ヨーロッパの悪魔ではけっこう上位にいるのではないでしょうか? それにしては弱いぞ^^;; ちなみに,懐かしの「あのおふたり」が,ちらりと登場してます。彼女の膨れたお腹からすると,本作品中の時間は『学校怪談』の後,ということになりますね。
 「第8〜10話 人魚の末裔」は,毎度おなじみ(笑)ラヴクラフトネタです。ラストの幕引きは,なんだかせつないものがありますね。一見邪悪そうでいながら,「古い契約はもう破棄だね」と話すときの笑顔がじつにいい老婆が,わたしは好きです。でも,じつは一番笑ったのもこのエピソードで,それは真紅郎と紫奈乃が旅館で同じ部屋に泊まるときの会話
真紅郎「地球最後の男と女になっても,おマエだけは襲わねぇから,安心しろ」
紫奈乃「わ〜〜っ! 真紅郎さまって紳士なんですねぇ〜〜」

です。

 それと本巻には「夢幻紳士−橋の上の女−」が収録されています。背負うと取り憑かれるという「おんぶおばけ」みたいな(笑)女の幽霊が出てきます。不条理風のエンディングかな,と思っていたら,意外なミステリ的ツイストに驚きました。で,ボーナスは,やっぱり,これまた懐かしの「彼」が出てきていることでしょう。苗字は出てきませんが,名前は「涼平」ですから,「彼」のご先祖様なんでしょうね。う〜む・・・どうやら女難は遺伝のようです(笑)

01/04/07

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