高橋葉介『学校怪談』15巻 秋田書店 2000年

 ついに最終巻であります。第1巻が1995年刊行ですので,足掛け5年,長いことお疲れさまでした(_○_)
 このシリーズに収められている各エピソードを見ると,1〜5巻と6巻以降では設定も方向性も変わっているとはいえ,純ホラーからスラプスティクス,ほのぼの系,ナンセンス,ブラック・ユーモア,しっとりテイスト,と,この作者が,初期作品からすでにその片鱗を見せていた多彩な短編手法が,遺憾なく発揮されており,「ヨースケの奇妙な世界」をしっかりと構築しています。おそらく,『夢幻紳士』シリーズと並ぶ,この作者の代表作のひとつになるでしょう。
 というわけで,本巻の感想に入る前に,これまで感想文をアップしなかった1〜5巻で,わたしが気に入ったエピソードを紹介します。
 記念すべき第1巻では,お約束的展開とはいえラストで「にやり」とさせられる「赤い靴」,鬱屈した少年心理を上手に視覚化した「少年ナイフ」,不条理で不気味なエンドレス・ストーリィ「ヤマギシ」などがお気に入りです。第2巻は,「水辺の情景」のスウィート・テイスト,「炎天」のショッキングなラスト,「マンホール・マン」のグロテスクでいながら,どこかとぼけたキャラクタ造形などが好きです。第3巻では,逆転の発想が楽しい「お守り袋」,もしかしたらいるかもしれない「門番」,最後が笑っちゃう「雪女」といったところでしょうか。4巻はなんといっても「黒子さん」,彼女の哀しげな風情がいいですね。奇想あふれるスプラッタ「心臓抜き」や,ホラーというよりファンタジックな「ダンス」,やっぱり死者より生者の方が怖い「矢島って誰だ?」も捨てがたいものがあります。そして第5巻というと,緊迫感に満ち,ホッとさせられるラストが秀逸な「金魚」,同じようなテイストの無言劇「毒娘」,幻想的ミステリとも呼べる「行水」などが楽しめました。
 皆さんはいかがでしたか?

 さて最終巻であります。やはり,6巻以降の主人公にして,「男運度 ―5」の(笑)九段九鬼子先生の行く末をはっきりさせて幕引き,というのが,もっともオーソドックスな展開と言えましょう。で,そのお相手はというと,学生時代の恩師(?)棟方征四郎(助)教授なる新キャラクタです。作者によれば,もともと「第249話 蘇生」だけの単発キャラだったようですが,あれよあれよという間に,九鬼子先生とラブラブ(死語)になってしまいます。ま,それはともかく,この「蘇生」での,「嫉妬心によって一時的に蘇生する」という発想は,奇抜で楽しめました。
 この棟方センセー,「第251話 十年の呪詛」で,ちらりとかっこいいところを見せますが,基本的にはボケ役――大学生の九鬼子(18歳)に,もののけを山ほど飲ませておいて,「う〜む・・・さすがだ。普通の人間だったら死んでるよ」と,しらりとのたまったり(「第252話 魍魎の家」),彼女を家に誘って心霊写真の鑑定を依頼したり(「第255話 時穴伝説」)と,おもいっきり大ボケをかまします(「誤解を招きやすい発言」も大笑いしてしまいました)。九鬼子先生は霊感がたっぷりあって攻撃的ですので,こういったタイプのお相手の方がお似合いなのでしょう(そう考えると,ともに霊感が強い山岸&立石のカップルって,けっこうしんどそう・・・^^;;)。ところで,学生時代の九鬼子先生って,なんでいつも毛糸の帽子かぶってるんだ?
 というわけで,九鬼子先生の方は一段落といったところですが,6巻以降,脇役に転落した(笑)山岸くんは,「第261話 ラスト・バトル」で,これまで何度か登場した魔少年との最後の決戦を繰り広げます。もうほとんど『バビル二世』『童夢』を連想させる展開に,思わず「ををっ!」と驚いてしまいましたが,ラストでの立石さんとのシーンは,ホッとさせられますね(でも,立石さんって,けっこう怖そう(「第256話 化け物屋敷に誘われて」)。山岸くん,くれぐれもご用心を(笑))。

 夢幻那由子やら棟方さゆり(征四郎のお母さん)やら,もしかすると別の作品に顔を出しそうなキャラクタも出てきますが,ともあれ『学校怪談』はこれでおしまい。この作者の新作を楽しみに待ちましょう。

00/08/26

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