JET『綺譚倶楽部 [ネムキ編]』2巻 朝日ソノラマ 1999年

 前巻の感想文で,「祝! 金大中小介&久我雅夢 復活!! 」などと書いたのですが,なんと2巻でおしまいというか,一時休止だそうです。う〜む,どうしたんでしょう?
 この作家さんは,この作品のような「おどろおどろ系」とともに,ユーモアを交えた「伝奇アクション系」の作品も書いておられています。本書帯の広告によれば,現在『ネムキ』で,「螺旋のアルルカン」という作品の連載を開始しているようです。内容を読んでいないので,はっきりしたことはわかりませんが,タイトルから,後者のタイプの作品のように想像されます。『闇の行人』が不本意な終わり方をしたこともあるのでしょう,現在の作者の描きたいテイストが,前者から後者へとシフトしたのかもしれません。あるいは掲載誌の『ネムキ』が,「怖い系」よりも「不思議系」の作品を中心に編集されていることと関係するのかもしれません。
 なんで,こんなことを思ったかというと,本巻所収6編のうちに2編―「うらめしや」「獅子吼」―が,どちらかというとユーモアを前面に押し出した作品だからです。「うらめしや」は新聞社「綺譚倶楽部」に現れた幽霊,また小介が引き寄せたと思いきや・・・というお話。また「獅子吼」は,小介が狛犬のような妖怪(?)になつかれ・・・という内容。こういったタイプの作品は,これまでのシリーズにおいてあまり見かけなかったので,ちょっと違和感が残りました。ですから,「作者は別のタイプの作品を描きたがってるのかな?(編集者が描かせたがっているのかな?)」などと邪推してしまったわけです。
 まぁ,それはともかく,またの復活を待ちたいものです。

 さて本巻で一番楽しめたエピソードは「道」です。かつて「阿片中毒」だったという不穏な噂(?)がつきまとう小介ですが,これまで彼の過去はほとんど触れられることはありませんでした。その一端が明らかにされるエピソードです。文字通り「過去の亡霊」が小介を苛む話で,サイコもの風のエンディングがなかなかグッドです。
 「妖刀記」は,タイトル通り「呪われた日本刀」ものです。旧家の離れ,新床の夜に起きた殺人事件,しかし周囲は雪で覆われ密室状態・・・という,横溝正史『本陣殺人事件』そっくり(というか,まんま(笑))のシチュエーションで始まります。凶器が,隠し場所(?)から出現するシーンがなんともグロテスクです。しかしそれはどちらの意思だったのでしょうか? 女の? それとも刀の? あるいは両者が相響き合ったのかもしれません。
 「妖刀鬼」は,「妖刀記」で出てきた刀匠国定最後の作品という妖刀「鬼切丸」(う〜む・・・^^;;;)をめぐるエピソードです。「狐」の正体はなんとなく見当はつくのですが,「鬼切丸」と「蠱毒」との絡みがいまひとつはっきりせず,ちょっと不満が残ってしまいました。
 ラストの「『暫』」は,小介の前から姿を消した雅夢,彼はいったい何処へ・・・という内容。ま,連載休止の「ご挨拶」と行ったところでしょうか(笑)。

98/06/05

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