野間美由紀『Ｊｏｋｅｒ』白泉社 1998年
高校生に関係したあらゆるトラブルを解決するために組織された全国的な学生組織“シャッフル”は，あらゆる業界にいる歴代ＯＢのバックアップを受けて活動を続けている。そして一般メンバーでも幹部でもない，オールマイティの切り札“ジョーカー”こと馬場千秋。姿を消したかつての優秀なジョーカーで，恋人・小百合の面影を胸に秘めながら，彼は今日もシャッフルに持ち込まれる難事件に挑む！
清涼院流水の『ジョーカー』のマンガ化ではありません（笑）。でも設定の荒唐無稽さはタメをはってます。ミステリとしての感想はあとで書きますが，う〜む，こういう設定は初っ端から脱力してしまいますねぇ・・・。なまじミステリとして本格風だけに，ちょっとしんどいところがあります。もっと思いっきりぶっ飛んでいたら，また印象は違うんでしょうが・・・。でもまぁ，最近のミステリはなんでもありですからねぇ・・・。
それと登場するキャラクタが，主人公も含めて，いまひとつ個性的でないというか，印象が薄いところがあって，そこらへんも魅力を感じられませんでした。
さてこの巻には，「Card1」「Card2」と題された２編の殺人事件が収録されています。 「Card2」はラヴホテルで発見された男子高校生の絞殺死体。彼の恋人・山田さりなは犯人を見つけてほしいとシャッフルに依頼し・・・，というお話。この作品で使われているトリックって，そうとう巧みに使わないと，白けてしまうところがあります。別のトリックと“合わせ技”で使うか，メインにするんだったら，京極夏彦みたいに衒学趣味でこてこてに塗り固めてしまうか・・・。う〜む，ですからいまいち説得力に乏しいですね。それに人格崩壊なんてこんなに簡単にできるのかなぁ？ 残念ながら，両編とももの足りない部分が残ってしまいました。「超本格推理物語」なんて煽り文句も，かえってマイナス効果になっているのではないでしょうか？ それともわたしが求めているものが間違っていたのかなぁ・・・。
「Card1」は奈良の法隆寺夢殿と東大寺正倉院で同時に起きた，高校生の殺人事件と自殺を扱っています。ひとりは静岡，ひとりは茨城の高校生。いったいふたりにはどういうつながりがあるのか？ という謎です。なぜ「奈良」なのか，という謎解きは，思わず「へぇっ」という感じで，なかなか興味深かったですね。ただ犯人探しとしては，『アトモスフィア』２巻の感想文でも書きましたが，どうも「絵に描いたような怪しいヤツ」がのっけから出てきてしまうと，正直「なんだかなぁ」といったところです。全体的に盛り上がりに欠けるところもありますし・・・（まるで有○川○栖みたい・・・，あ，石を投げないでください！）。
98/06/27