野間美由紀『アトモスフィア―12か月のひまわり―』2巻 白泉社 1997年

 ハーフの美少女・日向葵と気象予報士・稲見良一のミステリタッチな連作短編集の第2巻です(第1巻の感想はこちら)。「SEASON4」から「SEASON6」の3編と,別シリーズらしい掌編1編を収録しています。

「SEASON4 幻日」
 葵の前に現れた,ひとつ年下の科学少年・七尾裕巳。彼の積極的なアプローチに戸惑う葵だが,そんなある日,“幻日”という気象現象が起こり…
 太陽の周囲に淡い光の輪ができる“暈”というのは見たことがありますが,この“幻日”というのをお目にかかったことがありません。一度見てみたいですね。で,「へぇ,なるほど,こういう風なときにできるんだ」と感心して読んでいたのですが,そこに伏線があるとは・・・。
 ミステリもののマンガの場合,登場人物が少なすぎて,すぐに“犯人”がわかってしまう場合が多々ありますが,この作品では,わかってはいるけど,伏線の妙が楽しめました。
 ところで,余裕かましていた稲見も,七尾の出現で多少あわてるかと思いきや,なかなかしぶとい(笑)。
「SEASON5 爆弾低気圧」
 テレビでも人気のある気象予報士・りえにつきまとうストーカの正体とは…
 この作品も,「絵に描いたような怪しいやつ(じっさい「絵に描いている」わけですが(笑))」が出てきますので,“犯人(=ストーカ)は誰か”という興味は満足できませんでしたが,モチーフがよかったですね。急激な気圧差が生じて,強風が吹いたり,竜巻が起こったりするという爆弾低気圧,自分の心と相手の心との間の,大きな“気圧差”で生じるストーカ,タイトルと巧くマッチしています。周りが迷惑する点でも同じですね(^^;;。
「SEASON6 集中豪雨」
 珍しい食虫植物を発見した大学生・佐藤。豪雨の中,友人の戸神と写真撮影に赴くが,山崩れに巻き込まれ…
 読んでいて,「あれ,おかしいな」と思っていたら,いつのまにか葵が大学生! 国立C大学理学部で,稲見と同じ気象予報士を目指しているようです。思わず「七尾くんはどーした!」と突っ込みたくなりました(笑)。
 さて物語は,最初から犯人がわかっていて,葵&稲見コンビが,その犯罪にどういうふうに気づいていくか,推理していくか,という,いわば“コロンボ”的展開です。この作品のラストには,正直,驚きました。その直前の「該当すると思われるケースが1件あります」というセリフが心憎いですね。こういった小技は好きです。でも内容にしては,ちょっと長すぎるのでは?
「Mチャット24時―ナッキーの青い鳥―」
 「CHANNEL4」というサブタイトルがついているところを見ると,別のシリーズの1編のようです(「Mチャット24時」というのが,シリーズタイトルなのでしょうね)。
 う〜む,ありがちなネタといえばネタですね。

98/02/18

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