ゆうきまさみ『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』24巻 小学館 2000年

 え〜〜,前巻の感想文で,『じゃじゃ馬』がヴォリューム的に『パトレイバー』を越えた,と書いたところ,掲示板にてさかえたかしさんから,連載期間は,まだ『パトレイバー』の方が長いとのご指摘を受けました。『パト』は,途中に休載とかあって,同じ巻数でも,連載期間は1年くらい長いようです。さかえさん,ご指摘,ありがとうございました(_○_)

 本巻まずは,駿平&ひびきの結婚反対二大勢力の一角,佑騎をめぐるエピソードであります。もうちょっと粘るかな,とも思っていましたが,情けないほど,あっさり撃沈(笑)。まぁ,家をおん出た息子の実家での発言権なんてのは,こんなもんでしょうね,はははは・・・(力ない笑い<なにか思い当たるふしがあるらしい^^;;)。
 ところで「ちまいない」って,北海道方言なんでしょうか?

 さて,本巻のメインはストライク・イーグルのラスト・ラン,有馬記念編であります(本巻カヴァはイーグルです。“彼”も立派なメイン・キャラクタですよね)。おまけに今回は,ロンマンガンに騎乗して佑騎も出場するとあって,作者も,そこにいたるまでのプロセスと,当日の白熱したレースの模様をじっくりと描いています。とくにGIレース初出場の佑騎の喜びや緊張感,レース前の熱心なリサーチなど,プロとして成長しつつある彼の姿を巧みに切り取ってみせています。
 ストライク・イーグルのレースは,これまでもこの作品で何回となくエピソードとして描かれていますが,読み返してみると,第1巻,遭難(?)した駿平が,渡会牧場で最初に見たレース,ひびきや牧場の人々が喜ぶ姿を見たレースが,このイーグルのレースだったんですよね。で,ひびきに婚約指輪を贈るために,なんとかその資金を稼ごうとレースの予想をする駿平が,そんなイーグルの勝利と,それを喜ぶひびきの姿を回想するシーンが挿入されるのですが,ここはいいですねぇ。
 駿平は駿平なりに,ひびきのことを想っていろいろと考えるのですが,それ以上に,生産者としてイーグルを信じることの大切さを,ひびきの表情から読みとるわけです。たとえここで,他の馬に賭けて賞金を手にしたとしても,それで婚約指輪を買えたとしても,それをひびきはけっして喜びはしないだろうことに気づくわけです。そんな駿平の心の内を,マンガでよくあるようなモノローグで描くのではなく,回想シーンをバックに,彼に「あのときの顔だ。あああ・・・・」と呟かせることだけでもって,描き出しているところに,この作者の力量が感じられますね。
 そして力量といえば,やはりレースの描写はじつに迫力があります。坂東が騎乗するイーグルが,その脚を「爆発」させるシーン,佑騎騎乗のロンマンガンを,ランナクローズランドスケープが追い抜くシーン,そのランラン・コンビに大外から襲いかかるイーグルの雄姿・・・いずれも,競馬などめったに見ないわたしにも楽しめる緊迫感満点のシーンと言えましょう。

 ところで,本巻ラストでのひびきの対応を見ると,彼女,「安定期」に入ったのかな?(ああ,「おやぢの世界になってしまった」by駿平(笑))

00/07/25

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