高橋留美子『犬夜叉』7巻 小学館 1998年

 さて2巻で,犬夜叉によって左腕(左前足?)をぶった斬られて,しばらく姿を見せなかった犬夜叉のおにーちゃん・殺生丸の再登場です。しかも単なる再登場じゃない。殺生丸を,あの「奈落」がバックアップ。そう,50年前,犬夜叉と桔梗との間を引き裂き,そして不良法師・弥勒が探し求める仇。
 というわけで,本巻前半は「殺生丸再登場編」です。
 奈落よりもらった,四魂の玉を仕込まれた人間の腕を植え付け,半妖でなくては触ることのできないはずの鉄砕牙を手にした殺生丸が,犬夜叉を襲います。弥勒の「風穴」も,奈落があらかじめ用意した毒虫により封じられます。圧倒的な殺生丸の力を前にして絶体絶命のピンチに追い込まれる犬夜叉!
 と,まあ,ひさしぶりの「格闘モード」です。ここのところ「不気味系妖怪」やら,桔梗との因縁話などが続いていましたので,作者の欲求不満爆発といったところでしょうか?(笑) それとやっぱり弥勒というキャラクタはいい味出してますね。毒にやられてへろへろな状態なのに,薬を飲ませようとするかごめに,「できれば・・・口移しで・・・」というところ,また「わかった」と答えたかごめの,「七宝ちゃん,飲ませてあげて」という対応。格闘シーンにはさまれる,こういった「小ギャグ」の切れ味は健在です。

 深手の傷を負いながらも,なんとか殺生丸を撃退した犬夜叉。今回の事件は彼を大きく変えます。村に戻った一行,犬夜叉は,戦国の世と現代をつなぐ井戸の傍らでかごめを抱きしめ,思います。「かごめが死ぬかもしれないと思ったら,こわかった」と。そしてかごめを井戸に突き落とし,現代に返した犬夜叉は,井戸を埋めてしまいます。これ以上,彼女を危険な目にあわせないように・・・。「どこかで生きていればそれでいい。女が死ぬのはもういやだ」と・・・。
 う〜む,犬夜叉のかごめに対する気持ちがストレートに現れたエピソードですね。当然,このあとに桔梗との関係が絡んでくるんでしょうが,そこらへんをどう描くか? 楽しみですね。もっともかごめは犬夜叉の気持ちがよくわかっていないようですが(笑)。どうもこの作者のヒロインは鈍感なタイプが多いようです^^;;;

 そして物語は,謎の核心「奈落」の由来をめぐるエピソードへと展開していきます。かつて桔梗が助けた手負いの盗賊「鬼蜘蛛」,人間であったか彼が妖怪に取り憑かれ「奈落」となったのか? 妖怪・狼野干を使って犬夜叉を襲わせる際,奈落は意味深なセリフをつぶやきます。
「あいにく私は変化の途中でな・・・今は動けぬ」
と。ならば奈落もまた,犬夜叉と同じように「半妖」なのでしょうか? 「四魂の玉」を用いて,真性の妖怪になろうと欲する者なのでしょうか? 前巻において,犬夜叉が玉を求める理由は「人間になるため」であることが明らかにされました。そうすると,同じ「四魂の玉」をめぐって,かたや妖怪になるための奈落,かたや人間になるための犬夜叉という対立図式が浮かび上がるように思います。それはまた(もしかすると)桔梗をめぐる因縁なのかもしれません。はたして奈落の真の狙いはなにか? というのがメイン・ストーリィになっていくのかな?

98/08/17

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