高橋留美子『犬夜叉』6巻 小学館 1998年

 鬼女・裏陶(うらすえ)の呪術により蘇った桔梗,彼女の矢はふたたび犬夜叉を狙う! というわけで,50年前の桔梗と犬夜叉の関係がいよいよ明かされます。
 をを! 半妖である犬夜叉が「四魂の玉」を探し求めるのは,「妖怪になるためではなく,人間になるためだった!」とは!
 そして桔梗は人間となった犬夜叉とともに生きる決意をしていたのです。しかし,両者の間の憎しみが,誤解によるもの,そして何者かの邪悪な意志が働いていたことが判明してもなお,桔梗は言います。
「私はおまえを憎みながら死んだ・・・。
魂が・・・そこから動けない・・・
おまえが生きている限り救われない!」

 ふたりの間に一度できた溝は深く,哀しいものです。蘇った桔梗は,犬夜叉の前から姿を消し,人骨累々たる戦場の彼方へと去っていきます。
「生きている・・・犬夜叉・・・私は生きている・・・」
とつぶやく彼女の虚ろな眼差しは,いったいなにを意味するものなのでしょうか?

 さて,「桔梗復活編」に続いて「不良法師・弥勒編」です(笑)。
 かごめ・犬夜叉ご一行の前に現れた謎の法師・弥勒。スケベで生臭坊主,一筋縄で行かない性格不良の男ですが,「風穴」なる強力な法力をあやつる法師です。その弥勒,みずからに呪いをかけた妖怪を探し,諸国を放浪しますが,その妖怪は,50年前に四魂の玉を守っていた巫女を殺したという。つまり,弥勒が追う妖怪と,桔梗を殺し,ふたりを引き裂いた妖怪は同一のものだった! その名は「奈落」
 これまでの「四魂の玉を探す冒険物語」といった,ともすれば単調になりがちだったストーリィが,犬夜叉と桔梗,そして,いまだ謎につつまれた妖怪「奈落」との因縁をめぐる物語として,がぜん,活性化してきた感じです。よかった,よかった,『ドラゴンボール』にならなかった^^;;

 この巻最後のエピソードは「絵の中の鬼編」(あ,こういったサブ・タイトルは全部yoshirが勝手につけたものです(笑))。
 ストーカ的性格の絵師が,ふとしたことで拾った四魂の玉のかけらの力により,描いた鬼を実体化させ,心寄せた姫を略奪しようとするお話。「ゲージュツカに気をつけよう」という教訓を含んだ物語です(笑)。やっぱり,こういった「不気味系妖怪」のエピソードの方が,個人的には好きですね。人間の血と肝を吸った“墨”に,絵師が喰われてしまうラスト・シーンは,極端にグロテスクにならず,なかなか迫力があります。
 で,このエピソードで,一番笑ったシーン。
犬夜叉「やい弥勒! てめえひとりでかっこつけてんじゃねーぞ バカヤロー!」
かごめ「ごめんなさい。通訳します。ありがとう。あとはおれにまかせろって」
弥勒「そーは聞こえませんでしたが」

 この巻の一連のエピソードを通じて,犬夜叉とのラヴロマンスとしてだけでなく,かごめの存在も,なにやら大きな意味を持ってきているようです。はたして彼女がストーリィ展開にどういう影響を与えるか? 今後が楽しみです。

98/05/23

go back to "Comic's Room"