JET『花に恋して候へば』2巻 角川書店 1997年

 吉原を舞台に,男装の麗人やら,銀髪の剣士やら,忍者軍団やらが,白粉彫りに隠された謎をめぐって入り乱れる「大ボラ時代劇」(作者談)の2巻目です。

 1巻で,吉原の“忘八者”(用心棒みたいなもの)花龍(♀)の背中に“花”,忍者軍団の手先の花魁・右近太夫の背中に“鳥”の白粉彫りが明らかになったわけですが,残りは“風”と“月”。これまで出てきた白粉彫りをもっている連中というのは,いずれも一癖ふた癖あるものばかり。とうぜん,残りの“風”と“月”も一筋縄では行きそうにないのは,至極ごもっとも。というわけで,まずは「風の段」でのお目見えは,これまた男装の麗人・初太郎。といっても,花龍とちがってまだまだ子ども。でも見る人が見れば,お尻はしっかり女だそうです(笑)。で,この初太郎,どうやら銀髪の剣士・端倉幻兎に恨みを抱いている気配。1巻での幻兎は単なる“白馬に乗った騎士”といった感じでしたが,ようやく本筋に絡んできます。そして「月の段」で出てくる“隠れ里”。花龍も,幻兎も,初太郎も,みんなこの隠れ里“黄楊(つげ)の郷”に縁があるという・・・。花鳥風月の白粉彫りの秘密も,やっぱりこの隠れ里に関係してくるんでしょうねえ(これはまだ不明)。いやあ,ここまで来ちゃうと,ほんと,やりたい放題って感じですね。おまけに幻兎が銀髪なのも,初太郎が赤毛なのも,深吉野太夫の翠の瞳も,いずれも黄楊の里の祖先に異国人がいたせいらしい。となると,花鳥風月の白粉彫りに隠されているのは,南蛮渡来のお宝か? 伝奇ものの様相さえも帯びてきてましたねえ。

 さて2巻は,花龍と右近太夫が,忍者軍団に連れ去られるところで終わります。彼女たちの運命やいかに? そして新たに登場した,幻兎と同様,銀髪をもつ女・月女の正体は? 彼女の背中には“月”はあるのか? 作者のあとがきによれば,いよいよ次巻で完結。ここまで話を広げて,引っ張ってるからには,エンディングは期待してまっせえ〜

97/08/26

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