JET『花に恋して候へば』1巻 角川書店 1997年

 「時代(とき)は元禄,お江戸の北東(はずれ),花の吉原(くるわ)の絵空事(ものがたり)」

 「花」「鳥」「風」「月」の白粉彫り(躰が暖まると入れ墨が浮かび上がるという彫り物,本当はないらしいです)をもつ4人の女。その4つの彫り物が揃うと,なにやら意味を持つらしい。それをつけねらう謎の忍者軍団。吉原を守るため,それに対抗するは男装の麗人・花龍と,銀髪紅眼の流れ者・端倉幻兎。華やかな吉原を舞台に,善玉悪玉入り乱れての大立ち回り。

 白粉彫りやら忍者軍団,謎の美形剣士に男装の麗人と,あいかわらずケレン味たっぷりのJETの新作です。作者があとがきにも書いていますように,時代劇(というより時代考証無視の大活劇)への思い入れもたっぷりです。この巻は「花の段」と「鳥の段」ということで,ふたつの彫り物が揃いました。とうぜんこの「風の段」「月の段」と続くのでしょうが,まだまだ伏線ばかりといった感じです。はてされこの4つが揃ったときにいったいなにがわかるのでしょうか? 埋蔵金か,はたまた幕府転覆の秘密か? 忍者軍団の頭領は「我らが大望への足がかり」と言ってますが・・・。同じ作者のものに『花鳥風月殺人事件』というのがありますが,この人,「花鳥風月」が好きですねえ。

 ところで花龍は「忘八者」と呼ばれており,これは「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の8つを忘れた人間のことを指すそうですが(こういうのが本当に呼び名としてあったのかは知りません),そのシーンで8つの玉が描かれています。やっぱりこれって,「南総里見八犬伝」のことを意味しているんでしょうね。(♪いざとなったら,玉を出せ〜〜,てか?)

 それにしても,JETの描く女性は,色っぽいですね。わたし,好きです。

97/03/30

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