永井豪・石川賢『ゲッターロボ』1・2巻 双葉文庫 2002年

 太古より地中深く潜んでいたハチュウ人類による地上侵略が始まった! いち早く危機を察知した早乙女博士は,対抗すべく巨大ロボット“ゲッターロボ”を建設。その搭乗員として選ばれたのは,リョウ,ハヤト,ムサシの3人だった。いま3つの命が合体し,人類の存亡をかけて戦う!

 もうずいぶん前になりますが,石川賢『ウルトラマンタロウ』をマンガ化したことがあります(『少年サンデー』だったでしょうか?)。あまり期待していなかったのですが,テレビとはまったくテイストの異なるなかなかハードな展開に驚いた記憶があります。『デビルマン』もそうですが,この原作者&作画者,基本設定を共有しつつも,テレビ媒体とマンガ媒体とをきっちりと分けて創作しているようです。

 さて本編,いわずとしれた「合体ロボットもの」の草分け的存在でありますが,とても「お子さま向け」とは思えません(笑) まずなんといってもゲッターロボに乗る3人のキャラ設定がすさまじい。
 リョウは,アウトロウの格闘家。でもって,その力量を試すため早乙女博士が,プロの殺し屋をけしかける,というところもすごいです(なにしろその章のタイトルが「人間狩り」っていうんですから^^;;) そしてハヤトは,過激な学生活動家。高校の校舎のひとつを乗っ取ってテロを画策するという,とんでもない人物です。「これからは弱い人間は生きる資格はねえんだ!! 人類が生き抜くためには弱い部分の原因をつきとめ刈り取るんだ!!」なんてセリフ,「正義の味方」というイメージからはほど遠いですね。
 最後のムサシは,さすがに上記ふたりのキャラがあまりに「とんがっている」せいでしょうか,直情径行タイプの,ちょっとトリックスター的な存在です。解毒剤とでも申しましょうか(笑)(とくに,2巻末に収録されている「特別編 ガンバレ!! ムサシ」は笑えます) それでも彼の最期は壮絶ですね。主人公の自己犠牲で危機を回避するというパターンは,ヒーローものでは常套のひとつとはいえ,この作画者の絵柄で描かれるとやっぱり迫力ありますね(また友人を殺された少年が,その友人の首を抱えて突撃するシーンなどは,原作者の『バイオレンス・ジャック』『ガクエン退屈男』を彷彿させますね)。

 それともうひとつ,ハチュウ人類による地上侵略作戦のやり方も注目されます。普通,この手の作品だと毎回いろいろなタイプのモンスタ(本編ではメカザウルス)が襲ってくるというパターンなのですが,この作品では「北海道灼熱地獄作戦」とか,「浅間高原巨大竜巻作戦」とか,いわばメインとなる「作戦」があって,メカザウルスはそれをサポートするための存在といった感じです。またメカザウルスがメインであっても,エネルギーを吸い取る巨大なクラゲみたいなヤツなどが登場します。つまり侵略作戦としては,きわめて「効率的」だと言えましょう(笑)
 また恐竜帝国とゲッターロボとの最終決戦で,そんな「効率」を無視して戦いを挑もうとする首領ゴールは,バット将軍の撤退判断によって孤立,無惨な最期を遂げます(このゴールの最後の姿,リアルタイムで読んだ記憶があるんですよね。すごく印象的だったので覚えていました)。新たな敵百鬼帝国に舞台を譲るということなのでしょうが,展開のさせ方が巧いですね。こういった「リアルさ」がこの作品の魅力のひとつとなっています。

 ところで本シリーズは,これからも文庫化されるようです。次回配本は『ゲッターロボG』とのこと。これ以降はいずれも初読作品ですが,同じように原作パワーは炸裂するのかな? さてさて……

02/03/26

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