細野不二彦『ギャラリーフェイク』11巻 小学館 1997年

 さて10巻で,ラブラブ(死語)な関係になりそうになったフジタとサラですが,この巻では,そんなことはすっかり忘れてしまったようです。というか,サラの出番が少ないですね,今回は。作者も展開に困っていたりして(笑)。

 で,今回もフジタは,美術品というか骨董品を求めて,東奔西走するわけですが,この巻では国内が多いですね。「Art1 からくり綺譚」に出てくる金属製の蟹のからくり人形って,動いているのは見たことありませんが,以前,写真で見たことがあります。グロテスクなまでにリアルで,少々気持ち悪いですが,日本の職人さんの手練手管と心意気っつうもんを感じました。それから「Art8 伊万里の道」が,この巻では一番おもしろかったです。失踪したバブル紳士から家族のもとに送られてきた1枚の古伊万里の皿。手紙に書かれた“宝の山”を目当てに,アフリカに飛ぶフジタ。そこで彼が見たものは・・・,というお話。江戸時代に佐賀県有田で焼かれた古伊万里が,長崎出島を通じてヨーロッパまで輸出されていた話は,本で読んだことがありますが,その本の中で,中東やアフリカのモスク(イスラム寺院)の壁にはめ込まれているお皿の写真は,「なるほど,こういう使い方もあるんだなあ」と,なかなか新鮮でした。ところ変われば品変わる,といいますが,お皿をタイル代わりに使うという発想がなんともすごいです。一種のステータスシンボルでもあるんでしょうね。ローレックスの腕時計やらと同じようなもんなんでしょう。

 ところで最近,美術品ネタというか骨董ネタのマンガが多くなりましたね(読んでないけど『モーニング』でも始まったらしいですね)。少々辟易するぐらい。これも『なんでも鑑定団』の影響でしょうか? あるいはミステリと同様,マンガの世界も「素材主義」に偏りつつあるのかな?(これは『美味しんぼ』の影響?) ただこの作品も,少々マンネリ気味ですね。

97/10/03

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