高橋葉介『学校怪談』13巻 秋田書店 1999年

 さて今回も,怖い話や笑える話,せつなく哀しい話,訳のわからない話など,ヴァラエティに富んだ「怪談」を読ませてくれます。

 まずは怖い話から・・・
 「第212話 死者が帰る夜」は,夜の学校を訪れたひとりの男,彼は,はるか昔,校庭に埋めた「タイム・カプセル」を探しに来て・・・というお話。一見,ほのぼの系の展開を匂わせておいて,冒頭で九段先生が目撃する幽霊が,それを反転させるエンディングに導いて行くところは,ストーリィ・テリングとしてじつに巧いです。本巻中,一番楽しめた作品です。
 つづいて「第221話 トオル」では,山岸くんが,奇妙な子どもに,海へと誘われます。子どもの造形が,(作者もあとがきで書いているように)「ぬるっ」とした感じで,なんとも気色悪いです。九段先生が,顔を洗っていて,「山岸おまえ,水の中にいるのか」と啓示を受けるシーンは,なぜかスティーヴン・キング『クージョ』の,父親が子どもの危機を「知る」シーンを連想しました。
 そして,本巻のメイン・ディッシュといえば,「お盆恒例」(笑),夢幻魔美也が登場する「第226・227話 ホテル・くだん(前後編)」であります(本シリーズで,「前後編」ははじめてかな?)。いじめられっ子だった少女時代の九段先生をめぐる,もうひとつ「暗い過去」を描いています。11巻所収の「第189話 ひとりぼっちの運動会」に名前だけ出てきた「秘書のコイズミさん」が初登場する(これが最後か?),ちょっと「冒険活劇風」の作品です。う〜ん・・・学校ではいじめられて,家ではこんな異常性格者がいたんじゃ,たまらない子供時代だったでしょうねぇ・・・

 おつぎは哀しくせつない話・・・
 「第214話 赤坊主 白坊主」。神社の神主さんから,町に伝わる怪談を聴いた双葉は,その帰り道で・・・という内容。「赤坊主と白坊主」の怪談をすっきり解決したあとに描かれる双葉ちゃんのモノローグが,前半に引かれた伏線と響き合って,物語をせつない色合いに染め上げています。やはり彼女を主人公にすると,こういったテイストになるのでしょう。
 「第228話 花火」もまた,戦争で死んだ親子が,花火とともに昇天していくシーンが哀しくも美しいエピソードです。普段はがさつな九段先生ですが,浴衣姿がなんともしっとりしていて,お話の雰囲気にフィットしています。「そんな姿で出てこないで・・・せっかくの花火だ。楽しみましょう」というセリフとともに浮かべる優しい笑顔がいいですね。
 無言劇「第225話 人魚の卵」も,人魚(人亀?)の,どこかもの悲しさをたたえた表情が,不条理な展開ながら,全体に「シン」とした静けさとせつなさを与えているように思います。

 笑える話と言えば・・・
 「第213話 魔物封じの宴」に出てくる2匹の魔物。もうほとんど「怪獣大決戦」というノリですな。読んでいて,「あ,『ウルトラQ』!」と思ってたら,作者もしっかり「あとがき」で言及してました(笑)。やっぱり同世代だ・・・^^;;
 それから,ひさびさにみぞろぎ某が登場する「第219話 夢で逢いましょう」も,文字通り,「夢オチ」かと思いきや,ラストで明かされる“真相”は,「なるほど,ちゃんと描いてる!」と,納得させられました。
 「第224話 コーチは半魚人」は,カナヅチの神宮寺八千華が,泳ぎを習いに行ったスイミング・スクールはじつは・・・という,どちらかというと「不気味系」のお話なのですが,冒頭の「インスマス・スイミングスクールへようこそ」のセリフに,思わず吹き出してしまいました(笑)。

 ところで,この巻では,双葉と八千華のツー・ショット(女性同士でもこう言うのかな?)が,妙に多いですね。「腐れ縁」というやつでしょうか? もっとも,双葉ちゃんの脳裏では,「天使」と「悪魔」が争っているようで,単純に「仲良し」とは言えないようですが(笑)。

99/12/14

go back to "Comic's Room"