高橋葉介『学校怪談』11巻 秋田書店 1999年

 本巻所収の「第179話 九段先生を捜せ」では,8巻に出てきた九段先生のご先祖様,「素敵なお兄様」(笑)こと夢幻魔美也が久しぶりに再登場します。八千華を助けに行った九段先生が海で遭難,行方不明に・・・。ところが,捜索が打ち切りになったあと,山岸くん双葉嬢の夢の中に美勒が現れ,先生を救うために「“彼”を呼んでくれ」と告げる・・・というエピソードです。まぁ,ラストはしっかり締めますが,今回の魔美也氏,妙に軽い感じがしますねぇ^^;; 学校で彼を呼んだ山岸くんたちの前に現れた魔美也氏,楽しそうな笑みを浮かべながら「やぁ,素敵なお兄様と呼んでくれないか」って・・・ほとんど少女にいたずらでもしそうな怪しげなお兄さんだぞ!(笑)

 「久しぶり」といえば,「第189話 一人ぼっちの運動会」もまた,久々の「九段先生の暗い過去」ネタです。先生が楽しみにしていた運動会が雨で中止,着替えようと彼女がロッカーを開けると,そこでは“運動会”が開かれており・・・というお話。もっぱら生徒たちを助ける心強い役回りの先生ですが,今回ばかりは生徒たちに助けられます。話の内容から考えると,この回の表紙―1等賞の旗を握りしめ嬉しそうに笑う少女の九段先生―は,どこかせつないですね。

 「せつない」といえば,なにかともの悲しいエピソードの多い立石双葉嬢ネタでは,ラストで,九段先生が「決めのセリフ」を口にするのが,パターン化しているようですが,この巻では「第187話 暗示」がそれです。マラソン大会で完走したことのない双葉嬢,自分がモンスタに追われていると暗示をかけて走りきろうとするのだが・・・という内容。あまりに暗示が強すぎて走ることをやめられない彼女を受け止めた九段先生,「立石,何かに追われて走るな。何かに向かって走れ。ゴールは自分で決めるんだ」と彼女に諭します。やっぱりいいですね,こういったエピソードは・・・双葉嬢の生真面目なキャラクタも巧く表現されているように思います。

 「巧い」といえば,この巻で一番楽しめたのは「第193話 迷宮の森」です。夜,森の中を歩く山岸くん,ストーカに襲われる少女を目撃し・・・という話です。現実とも虚構とも,現在とも過去とも,死者とも生者ともつかぬシチュエーションと登場人物。それが何度も繰り返される構成は,幻想的な雰囲気にあふれています。とくに毎回登場する警察官がなんとも不気味ですね。この森で「本当に起きたこと」はいったいなんだったのでしょうか?

 「幻想的」といえば,同様に死者と生者との区別が曖昧なまま展開する「第178話 コンビニの怪」も楽しめました。この話は都市伝説を元ネタにしたそうですが,たしかに,真夜中,明かりの絶えた街の中で,唯一やたらと眩しい光に満たされたコンビニというのは,都市伝説の舞台になりそうな不気味さ,「異世界性」を持っているように思います。

 「不気味さ」といえば,「第182話 眼喰い鳥」も,多少先端恐怖症の気味のあるわたしとしては,怖かったですね。それにしても,双葉嬢と八千華,普段は山岸くんをめぐって牽制し合うふたりですが,彼に対する評価では一致するようですね(笑)。

99/03/11

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