青池保子『エロイカより愛をこめて』8巻 秋田文庫 1998年

 殺されたNATOのエージェント,オットーが残した謎の言葉「笑う枢機卿」を手がかりに,ローマへ,そしてスイス・ルツェルンへ飛ぶ少佐。しかし彼の任務を阻止せんと,KGBは,“ミーシャ”の愛弟子“明けがらす”を送り込んだ。さらに,ルツェルンで“一仕事”を計画する伯爵が参入。例によっての三つ巴の闘いは,いかなる結末を迎えるのか?

 という「NO.12 笑う枢機卿[Part2]」です。
 で,今回の見物のひとつは,少佐から真っ向から対決する伯爵の雄姿(笑)であります。ルツェルンにあるオンボロ僧院の壁画に,オットーの隠したマイクロ・フィルムがあるらしいと,勇んで乗り込む少佐。当然,任務のためなら壁画のひとつやふたつ屁でもない。一方,中世の幻想(と自己陶酔)に浸る美術愛好家の伯爵にとっては,少佐の行為はあまりに許し難い蛮行。
 これまでなにやかやと少佐に逆らっていた伯爵ですが,そこにはどこか余裕みたいなものが感じられていたのに対し,このシーンの伯爵はけっこうマジといった風情です。なにしろ,天使像の翼で少佐の頭をガンと,大文字で殴るくらいですから・・・。
 それでも後半,“明けがらす”によって奪われた壁画を奪還しようと,要塞のごとき古城に侵入する少佐,伯爵,ボーナム3人のコンビネーションはなかなかのものであります。少佐と伯爵,お互いの性格がいやというほどわかってきたようですね(笑)。
 それとこのエピソードで個人的に好きなのが,ヒゲのおじさん“明けがらす”です(伯爵に飛びナイフでヒゲを落とされてしまいますが^^;;)。このおじさん,さすがミーシャの愛弟子だけあって,手強い相手ですな。とくに少佐から壁画を強奪するところなどは,そのスピーディさ,周到さは,目を見張るものがあります(まぁ,ちと詰めが甘かったですが^^;;)。またクライマックスでの,少佐とのどつきあいも,師匠であるミーシャの姿を彷彿とさせます(6巻参照)。

 そして本書にはもう1編,シリーズ最大の問題作(と個人的には思っている^^;;)「番外編 アラスカ物語(付・シベリア物語)」が収録されています。
 少佐の「アラスカへ行け!」は,単なる脅し文句ではなかった! 「笑う枢機卿」で結果的にKGBに利する行為をとってしまった部下25人は,アラスカに送られてしまいます(Zのみ残留。それが彼にとって良かったのかどうかは別にして(笑))。で,アラスカに送られた彼らの悲哀がせつせつと描かれる(?)番外編です。めったに出てこない部下たちのプライベートな部分が出てくるところは,必見です。Aの奥さんはけっこう美人です(^^ゞ(Aが童顔のせいでしょうか,なんとなく姉さん女房のようにも見えるのですが・・・)。
 でもそれ以上に注目すべきは,「シベリア物語」に出てくるミーシャの娘さんでしょう!! ホントにミーシャの娘かと目を疑うほどの,清楚とした美少女で,どう考えても(出てきたことはありませんが)奥さん似でしょうな(笑)。早く「広いアパート」に戻ってほしいものです。

98/11/20

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